第34話 ご乱心
この親バカ皇帝は何かするかと思っていたけど、まさか褒賞と見せかけて剣で斬りつけてくるとは。
昨日も追いかけ回されたし、元気になったということか。これなら遠慮はいらなそうだ。
ん? 古文書の表紙をよく見るとⅤだった数字がⅦに変わっていた。
ルリシアさんを狙った刺客を倒したことで、レベルが上がったのかな?
だけど最後のページ⋯⋯保管するページの枠は十二のままだ。最初のページ⋯⋯バトル用のページも五のまま。常時発動型のページも二つのまま。ⅤからⅦでは何も変化なしか。
何か枠が増える法則でもあるのだろうか?
だけどとりあえず今は皇帝陛下を何とかしよう。
現れた古文書の最後のページにセットされたカードが、裏表示で重なり、俺はカードを引く。
カードの中身はパワーブースター(⭐3)、マジックブースター(⭐3)、大岩(⭐1)、ポイズンスネークの毒(⭐2)、真実の目(⭐2)だ。そしてバトル用のページに五枚をセットする。
すると世界の時が動き始めた。
「死ねぇぇぇっ!」
皇帝陛下は上段から剣を振り下ろす。
早い! これが病み上がりの人の剣速なのか!
だが接近してから
そして俺は向かってくる剣に対して引くのではなくさらに前に進み、皇帝陛下との距離を詰める。
「なに!」
皇帝陛下は予想外の行動だったのか、はたまたいるはずの場所に俺がいなかったため、驚きの声をあげる。
俺は剣が振り下ろされる前に腕を掴み、そのままの勢いで投げ飛ばす。
すると皇帝陛下は、弧を描きながら床に叩きつけられるのであった。
「ぐはっ!」
皇帝陛下は苦悶の声をあげながら、床でうずくまっている。
少しやり過ぎてしまったか? でも突然斬りつけてきたんだ。投げられても仕方ないだろう。
「大丈夫ですか?」
俺は一応心配する振りをするため、声をかける。
「ル、ルリシア⋯⋯この小僧は皇帝である私に手を挙げたぞ。父の代わりに成敗してくれ」
「わかったわ」
ルリシアさんが皇帝陛下の命令通り剣を抜く。
だが剣を向けたのは俺の方ではなく、皇帝陛下の方だった。
「よくもユートくんを攻撃したわね。お父様でも許さないんだから!」
そしてルリシアさんは皇帝陛下に向かって剣を突き刺す。
「くっ!」
だけど残念ながら皇帝陛下は立ち上がり、紙一重でルリシアさんの攻撃をかわしてしまう。
ちっ! 後少しだったのに。がんばれルリシアさん。
俺は心の中でルリシアさんを応援する。
「ルリシア⋯⋯先程のは冗談だ。小僧の実力を知りたくて試したのだ。だからその物騒な剣はしまいなさい」
嘘だ。
「嘘を言わないで下さい。お父様の殺気は本物でした」
「ちっ! バレたか」
褒賞を渡す振りをして奇襲をかけるなんて、最低な皇帝だな。
「この小僧はルリシアのキスを受け、昨日は同じ部屋で寝たというではないか」
「それの何が悪いの?」
「悪いに決まっている! お前はこの国の姫だぞ! もっと自分の立場を考えろ!」
「ユートくんは私の護衛よ。一緒にいるのは当然じゃない」
「護衛か。それでは何もやましいことはなかったのだな」
「⋯⋯⋯⋯」
ええっ!
何故そこで伏し目がちになって黙っちゃうの! しかも顔も赤くなっちゃてる!
それじゃあ何かあったって言ってるようなものじゃないか!
まあ確かに一緒にベッドで寝たり、お風呂に入ったり、胸を触ってしまったけど⋯⋯
俺はこの後の展開が読めたので、急ぎ古文書にセットされたパワーブースターを手に取り使用する。
すると俺の身体能力が劇的に向上した。
そして保管用のページにある、最後の一枚が裏表示で目の前にきたので、引く。
カードはポイズンスネークの毒(⭐2)だ。
俺はポイズンスネークの毒をバトル用の枠にセットする。
「小僧⋯⋯いや、ガキ⋯⋯いや、くそ野郎⋯⋯」
段々と扱いがひどくなっていくな。
それに目が完全にイッテしまっている。皇帝陛下が快楽殺人の犯人と言われても信じてしまいそうだ。
「貴様の血は何色だぁぁぁっ!」
皇帝陛下がまるで獣のように、ものすごいスピードでこちらに迫ってくる。
そして右に左にと剣を振り回し、攻撃してきた。
「くっ!」
剣を受ける度に手が痺れていく。
皇帝陛下の攻撃は重く速い。もしパワーブースターを使っていなかったら、すぐに殺られていた。
このまま防御一辺倒だと、いつか殺られてしまうかもしれない。
本当はルリシアさんに助けてもらいたい。だけどルリシアさんは恍惚な表情を浮かべ、何やら独り言をぶつぶつと呟いており、こちらが見えていない。
こうなったらこっちも本気を出して、皇帝陛下を止めるしかないか。多少怪我をするかもしれないが覚悟しろよ。
俺は皇帝陛下に対して、本気でいくことを決意する。
「娘を惑わす不埒者め! このミスリルの剣の錆にしてくれるわ!」
皇帝陛下が再びこちらに迫ってくる。
俺は振り下ろされた剣をいなし、隙が出来た所にむかって右拳を顔面に叩き込む⋯⋯はずだった。
「ぎゃっ!」
俺が拳を叩き込む前に、横から木剣が飛んできて、見事皇帝陛下の脳天に直撃したのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます