第5話 初めての実践は唐突に
鍛冶屋ダインの場所はわかる。
走れば数分以内には着くだろう。
だけど後少しという所で、突然叫び声が聞こえてきた。
「くそっ! あっちにいきやがれ!」
「おじいちゃん⋯⋯怖いよう」
「ネネ、ここは私に任せてこの少年と逃げるんだ」
声の質からして少年、少女、大人の男性といった所か。
そしておそらく少年の声はドイズだ。
俺は声が聞こえてきた方へ向かうため、建物を右に曲がる。するとそこには、五匹の魔物に襲われたドイズ達の姿があった。
おそらく少女がネネちゃんで、大人の白髪の男性はネネちゃんの祖父だろう。
ドイズとおじいさんはそれぞれ手に槍と斧を持って牽制しているが、二人は防戦一方だ。
なるほど。なぜこんなに早く魔物が街に侵入しているか疑問だったが、すぐにその理由がわかった。
五匹の魔物は空を飛んでいるからだ。
西門にいる冒険者達を飛び越してここまで来たのだろう。
三人を取り囲んでいる魔物のうち四匹は、女性の頭に鳥の翼と足を持っているハーピーだ。そしてハーピーの背後で様子を窺っているのは、ライオンの胴体に鷲の頭と翼を持っているグリフォンだ。
ハーピーはともかくグリフォンはかなりでかいな。おそらく三メートルくらいはあるんじゃなかろうか。
あの爪で引き裂かれたら、一撃で致命傷を負いかねない。
「ぐあっ!」
突然ドイズの声が辺りに鳴り響く。
どうやらハーピーの爪が左肩を切り裂いたようだ。
「ドイズくん大丈夫!」
「大丈夫だ。ネネちゃんは早くじいさんとこの場を離れるんだ」
ドイズの肩から血が地面に滴り落ちる。
痛いだろうに中々男を見せるじゃないか。そういう子は嫌いじゃない。
だが明らかに強がっているというのはわかる。このままだと三人は殺されてしまう。
俺は腰に差した剣を取り、気配を消しながらハーピー達の所に向かう。
だがこの時周囲に異変がおきた。
突然、ハーピーやグリフォンはもちろんのこと、すべての生物の動きが止まったのだ。
そして自動的に古文書が俺の前に現れる。
「これが
確かにそのようなスキルがあるわかっていたが、実際に周囲の時が止まると驚いてしまう。
女神の祝福を受けた時、俺の頭の中に入ってきたことは⋯⋯
・攻撃を受ける前、またはバトルが始まる時は必ず
・
・
・カードは全部で十枚持てるが、バトル中は古文書にセットした五枚しか使用できない。しかしレベルが上がることで持てるカードの枚数は増えていく。
・バトル中カードが0枚になると死亡する。対象の敵が死亡、戦意不能、逃走した場合はカードが復活する(ただし使用した消耗品カードは戻らない)。
・対象から一定以上の距離を取った場合、バトルは中止となる。
・物をカードにすることが出来る。
・カードにはレベルがあり、Nカード(⭐1)、Rカード(⭐2)、Sレアカード(⭐3)、SSRカード(⭐4)、URカード(⭐5以上)とする。
まず目に止まったのが
時が止まるなどチートスキルだと思ったけど、残念ながら強力すぎるスキルには欠点もあった。
要はこの時間はカードを引いてセットすることしか出来ないという訳だ。
だけど実際に
そしてバトル中にはカードを五枚しか使えない。0枚になると死亡とは、かなりリスクが高い。五枚使えるが実質四枚しか使えないようなものだ。
それとこのままではカードを使用出来ないので、古文書にセットする必要がある。
俺は手持ちのカードを引こうとすると、突然古文書の中にあるカードが裏表示で重なって出てきた。
「これは引けってことなのかな?」
元々手持ちのカードは四枚しかないから引いても意味ないような気がするけど⋯⋯まさか。
俺はあることに気づいてしまった。
これはどのカードを引くか選べないということなのか。
今は手持ちが四枚しかないから、五枚引くとなると自動的にこの四枚が選ばれることになる。だけど手持ちのカードが十枚あって裏表示から引くとなると、欲しいカードが引けない可能性がある。
これは後で検証が必要だな。
ともかく今はこの四枚から引くしかない。
「ドロー!」
俺はカードを引き、四枚のカードを古文書に最初のページにセットした。
すると周囲の時が進み、世界が動き始める。
「まずはこのカードを使う!」
俺は一枚のカードを手に取り、宣言するのだった。
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