神様にいらないと言われ、何回も元の世界から捨てられてきたけど。 次はクラスごと『異世界召喚』という形で捨てられてしまったので、もう私が神様を捨てようと思います

@onigokko0309

プロローグ

 みんながこの世界の主人公だ!なんて、恵まれた人間の言うことだ。


 ヒーローになれる人間は生まれた時から決まっているし、ヴィランになれる人間も生まれた時から決まっている。

その運命を変えることは一人の力では叶わない。

私はその"運命"が大嫌いだ。



*************


「天夏!聞いてるの?この話するの何回目よ!」

お母さんの怒声が私の耳をつんざく。

我に変えると目の前には顔を真っ赤にして怒っているお母さんが立っていた。 


 どうやらまた怒らせてしまったらしい


「いい加減にしなさいよ、何回も何回も……」


 朝っぱらから怒られるのは気分が乗らない。

急いで、食べていた朝ごはんを口に詰め、リュックを片手に玄関に向かう。


「天夏!?ちょ、ちょっと待ちなさい!」

私はお母さんの制止を聞き流し、ドアを開けて外に飛び出す。

外は雨の匂いが漂っていて、吹き抜ける風が気持ちよかった。


「本当にもう……行ってらっしゃい天夏、怪我せず帰ってくるのよ!」


 お母さんの諦めたようなため息混じりの見送りの言葉を聞きながら私は学校へ向かった。


**************


 学校につき、そのまま急いで教室に向かう。

教室についてようやく、ホッと息を吐き出せた。


 教室は今日もガヤガヤと賑やかで、友達の笑い声や話し声で溢れかえっている。

その騒がしさのおかげで、ようやく居心地の悪さも消え、朝お母さんと喧嘩したことも忘れられそうだ。


 まぁ一方的に怒られてただけだけど。


 本当は私も頭ではわかっていた。

お母さんは少しも悪くないと、善悪をつけるなら悪いのは私のほうだ。


 お母さんが怒る時はいつだって私が何か悪いことをした時で、私情を挟まれたことも理不尽に叱られたことも一度もない。


 その事実が余計に私の気持ちを逆撫でしてくる。


 少しでもお母さんが自分勝手に私のことを叱ってくれれば、私も自分が悪いと後ろめたさを感じることもないのに。


 その時、後ろからギュッと誰かに抱きつかれた。


「天夏っ!おっはよー。今日は妙にしみったれた顔してんね」


 ハグをした犯人は三橋奏、髪の毛を三つ編みにゆっており、可憐な香りを漂わせている。

友達も多い方で誰彼構わず話しかけていく明るく気さくな女の子。


「まー色々あってね」

私は今朝起きた出来事は話さないでおき、その代わり奏のほっぺたを仕返しにとモミモミする。


 奏がもーやめてよと呟いたその瞬間、奏の姿が消えた。

さっきまで話してた奏が。

本当に、その場からいなくなったのだ……一瞬にして、

周りをみると明らかに教室にいたはずのクラスメイトが減っている。


 状況を飲み込む前に、私はいつの間にか教室の床に広がっていた悪趣味な魔法陣に飲み込まれ、意識を失った。


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