第8話 ジローに会いたくて。

 ジローに会いたくて、会いたくて、会いたくて。

 ジローの布団で眠った。


 ジローのちょっぴり汗臭い匂いがした。


 ジローに会いたくて、会いたくて、会いたくて。

 ジローの大きな水色お茶碗で、ごはんを食べた。


 一杯目すら食べきれなかった。


 ジローに会いたくて、会いたくて、会いたくて。

 泣いて、泣いて、泣いた。


 胸の奥が痛くて苦しくて、なんだか空っぽだった。

 

 ジローに会いたくて、会いたくて、会いたくて。

 今日もジローの布団で眠る。

 ジローの布団は、もう私の匂いに変わってしまった。


 ジローに会いたくて、会いたくて、会いたくて。

 今日もジローの水色お茶碗でご飯を食べて、食器を洗っていると、ぱかりと真っ二つに割れてしまった。

 真っ二つ。

 私はそれを両手に持って、思った。



―――ジローは、もういない―――



 もう、いないんだ。

 愕然としながら、水色お茶碗をゴミ箱に捨てた。





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