第4話 失われた記憶

  朝、オレは激しい頭痛と共に目覚めた。


 うう……頭が痛い……


 昨日……


 そう! 昨日! 昨日は依頼者の泣きボクロに会って……それから……電話番号を聞いたんだ。


 それから……


 うう……思い出せない……それにこの頭の痛みはどういうことだ?

 昨日のことが思い出せず色々思案していたのだが、ふとベッドの傍らに目をやると……

 ノートの切れ端だろうか? なにか走り書きのようなモノが書いてある。マスターの字だ。見ると……


『昨日は美人の前だからって調子に乗って酔いつぶれやがって。


 ここまで連れてくるの大変だったんだぜ?


 依頼内容はオレが聞いてるから目を覚ましたらウチに来な。


 マスターより』


 まあ、そういうワケだ。まったくマスターには世話になりっぱなしだ。


 しかしなぜだ?


 マスターの顔を思い出すと、こう……うう……頭が……痛い。それに憎悪が掻き立てられる気が……。まあ、気のせいだろう。

 さて、マスターから聞いた泣きボクロからの依頼内容だが……


 行方不明者の捜索。


 泣きボクロがオレに会う、それより3日前……散歩の途中で忽然と姿を消したのだと言う。


 なるほどな……たが、いなくなってもう3日か。ただの迷子にしては長すぎる。

 ややこしいことに巻き込まれてなければいいが……

 オレは懐にしまったマスターから渡された写真を今一度確認する。


 まあ……行方不明者と言っても……


「ワン」しかしゃべれねえけどな。


 マスターから渡された写真には実にかわいらしい1匹のチワワが写っていた。

 行方不明者ではなく……行方不明犬か?

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