第11話 その金髪ツインテ、KAWAEEE……!
「なにぃいいいい! 反撃する間を与えず氷の針を作って飛ばし続けるなんてどんだけ凄い魔法センスだよ!」
「なるほどぉおお! キングオークが氷の結晶に気を取られている間に地面を凍らせ浅いすり鉢状にしてキアラに近づかせなくする作戦か!」
「うおおおお!? 眼を庇った腕に氷の針が何本迫っても突撃してくるなんて、キングオークのやつなんてタフさだ!」
「えええええええ!? 氷の階段で上に逃げたぁああああ!? ああ! でも、キングオークが階段をぶっ壊したあ! ああ! でも、その階段を壊した拍子に目のガードが外れたからその隙を狙ったのか!?」
「うおおおおお! 一発食らったはずなのにまだ立ち上がるなんて、とんでもねえタフさだ! オークもタフな部類に入るがこのタフさだけならもしかして魔王級なんじゃねえか!? なんてタフな野郎だぁああああ!」
俺は必死にキアラ対キングオークの激戦を解説する。
大体、【はずコピ】の戦闘シーンはこんな感じ。ゴメスが色々と状況を説明しながら驚く役回り。なので、俺も色々と魔物や魔法の知識を蓄積。ここでキングオークが魔王レベルのタフさを持つヤバい奴なんだけど、タフさだけなので魔王はもっとすごいヤバいんだぜという伏線を張っておくというのが原作通り。
この世界に読者がいるはずもないので喋っていてめっちゃはずいがそれがゴメスの役割である以上全うしたい。
それに、キアラがキングオークと戦うという原作から外れたイレギュラーが起きたからには少しでも軌道修正はしておきたい。
全てはゴメスがゴメスとしてのハッピーエンドを迎える為!
俺は自分が解説、応援だけしか出来ず何もできませんよアピール。
どうせトレスがいるから、神の強制力でチートどーんでキアラきゃートレスーアゲーになるから、俺も安心して手を出さない。
さあ、キアラ、これだけ近くにトレスがいればトラウマレベルのピンチにはならないからな。
安心して負ければいい! それもまた人生だ!
と、思っていた時期がゴメスにもありました。
「ふぅ……ま、ざっとこんなもんね」
キアラがトレードマークの金髪ツインテを手で払い呟くと、ズドオオオンという轟音を響かせながら倒れるキングオーク。
あれれぇえええ?
おっかしいぞお?
キアラがキングオーク倒しちゃったんですけど?
あれえ?
このストーリー展開大丈夫?
トレスも『おぉ……』ってなってるんだが。
とはいえ、マジで倒しちゃったので、俺のやるべきことは一つ。
「SUGEEE! マジか! もしかして刺しこんだ氷の針を遠隔操作して頭の中をぐっちやぐっちゃにしたってのか、どんだけ凄い魔法の技術なんだよ!」
キアラをAGEてAGEてAGEまくる!
そうすれば、その後トレスが何かしらでキアラを助けたらトレスAGEにもなるしな!
そうだ! そうしよう! そうするべ!
今はキアラをアゲまくろうぜ!
「いや、魔物の体内に入った魔法をコントロールするなんて聞いたことはねえよ! 繊細の極みじゃねえか! そういえば、キアラはなんだかんだで色々と細かい気遣いが出来るよなあ! ヒナやシロのちょっとした変化にも気づくし、自分の装備も凄く丁寧に扱ってるし滅茶苦茶やさしいし、その上でこんなに強くて一人でキングオーク倒せるなんてどんだけだよ! しかも、最初はボロボロにやられてたのに自分で立ち上がって、戦いの中で成長するなんてとんでもなくかっけー! キアラ、す、げ……!」
俺が読者に説明するかのように叫んでいると、背中をぽかりと殴られた。
振り返るとキアラが真っ赤な顔を金髪ツインテで隠したまま、じろりとルビーの瞳で俺を睨んでパンチしていた。
「もぅ……! ほめすぎ………………………ばか」
うわあ、このツンデレヒロイン、KAWAEeee……。
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