第9話 そのオーク、UZEEE!
「死にたくなければ退きなさい! 退かないなら、苦痛なく殺してあげるわ」
そう言ってキアラは、細い氷の針を数本生み出す。
そして、オークの眼に向かって正確にコントロールした氷の針を深々と突き刺していく。
「ひぃいいいいいい」
「ちょっと! ゴメス! あんたオークに共感しないでよ! 気が散るでしょ!」
キアラに怒られた。いや、だって、ねえ。目にぶっ刺さって、そのまま倒れて動かなくなるんだぜ。怖すぎる。
「こんな繊細な芸当、キアラにしか出来ないよなあ。マジで天才だ」
思わず感嘆の声が漏れる。
と、その瞬間、ゴメススキンヘッドに嫌な感覚!
俺が慌てて飛びのくと、かき氷の塊みたいなのが降って来て地面に。
横を見ると、キアラさんが顔を真っ赤にして怒っていて、金髪ツインテがゆらゆら浮き上がっているように見えるなあ。
「ゴメス~……集中したいから黙って。もしくは、アンタも働きなさい!」
「わ、わっかりました~!」
俺は慌てて駆けだす。あのかき氷を頭にぶっかけられるならまだしも氷の針はシャレにならん。それに、正直……。
「まだ楽観視出来る状況じゃねえよなあ……!」
わらわらと沸いてくるオークども。
キアラの一撃で殺せるが、だからといって、トレスのように一瞬でぼかーんではないので、地道に殺していくしかない。それに、キアラ本人が言ったように集中力のいる繊細な技だ。
キアラを集中できる環境に置くために、俺が出来ることは……。
「やーいやーい! お前らの母ちゃん、でべそそー!」
テラテラ輝くスキンヘッドを揺らしながらオークどもを小馬鹿にする。
俺のクソデカボイスのせいで、オークたちはこっちに気を取られる。こっち見んな。いや、見ろ。
キアラは戦闘中ずっと叫んでる俺の声なんて慣れっこでずっと魔力を練り続けている。
「来いよ! はげぇえええ!」
「「「「「「ブギャアアアアアアア!」」」」」
『ハゲはてめえだあ!』と言ったかどうかは分からんが、オーク共が一斉に俺に襲い掛かる。
「いやっほぉおおおおお!」
俺は態勢低く駆け出しオークたちの間をすり抜けていく。こっそり頭に塗ったオイルトードの油のお陰で俺のスキンヘッドはぬるっぬるっ。軌道のずれた攻撃はずるりと滑るし、狭いオーク達の隙間には頭を差し込んでぬるりと通り抜けていく。
そして、振り返ったオークにキアラの。
「食らいなさい! 〈アイスニードル〉!!」
針の穴を通す一撃!
これを繰り返し、どんどんと倒していけばこっちのもんだ。
だけど、やっぱり俺は主人公じゃない。全てがご都合で動いてくれない。
「キアラ! あぶねえ!」
「え?」
1人だけ俺の〈挑発〉の効きが悪かったらしいキングオークがキアラの背後から迫ってやがった。
「キングオークゥウウウ! お前……俺の〈挑発〉が効かないなんてSUGEEE!!!」
俺がそう叫ぶと、キングオークは自分をほめられたと理解したのか、きょとんとした表情で動きを止めた!
今だ!
そして、俺はその瞬間を見逃さず、真っすぐキアラにつっこみキアラを抱きかかえてキングオークの股の間を通り抜ける。
「はっはっは! 褒められて力が抜けるなんてまだまだだなあ! キングオーク!」
自分が嵌められたと分かり、鼻息荒く振り返るキングオーク。そして、その後ろにはオークの軍団。逃げ道はなさそうだ。
だけど。
俺が散々大声出していた理由がもう一つあるんだよ。
「コピー!〈アイスハンマー〉!」
巨大な氷の槌が大量に現れてオークどもを潰していく。
「キアラ、ゴメス大丈夫か!?」
ピンチの時にいいタイミングで現れる主人公トレス君登場!
「やれやれ……オレの知らない間にこんなことになってるなんて」
うん、トレス、やれやれため息やめれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます