オタクな俺だけど、ダンジョン配信者を推してもいいですか?~何故か推しを助けてオタ活アサシンと呼ばれてました~

桜咲 ナイ

第一章~オタ活アサシン始動編~

第1話 オタ活アサシン

「今日もダンジョン配信はっじめっるよー!」


いつものレンちゃんの配信。

レンちゃんの配信を作業用BGMに、俺はいつもダンジョンを潜っている。


【おお、はじまったー!】

【今日も可愛い】

【ツインテール引き千切りたい】

【やめろ俺のレンちゃんがショートになってしまう】

【‪”‬俺ら‪”‬のな?抜け駆けすんな殺すぞ】

【織田:50000¥今日も可愛いぜ俺らのレンちゃん】


「織田さん!いつもありがとうございまーす!」


俺はダンジョンで稼いだ金を、レンちゃんのスパチャに注ぎ込んでいる。

それを見てレンちゃんが喜んでくれると、俺まで嬉しくなってくる。

これが真のwin-winというやつだろう。


「あれはアイスウルフですね!氷のブレスは危険なので注意してください!」


そう言いつつ、レンちゃんは刀でアイスウルフを一刀両断する。

可愛い見た目とは裏腹に、その強さはトップレベルのダンジョン探索者を凌ぐ程だ。


【レンちゃんはなんであの、魔物を真っ二つに出来るんだ】

【普通2、3分の攻防で倒し切る相手なんだけどな】

【あいつのアイスブレスは冷たいし厄介なのになー】

【オマケに耐久高いし、噛みつきながらアイスブレスしてくるから凍傷のリスクがある】

【レンちゃん化け物だな!?】


「いやー!順調ですね、そろそろこのダンジョンも完全制覇でしょうか!」


このダンジョンは、俗に言う中級者向けダンジョンだ。

初心者向けダンジョンを制覇した人や、初心者向けダンジョンの深層で行き詰まった人が力をつけるために上層で狩りをする事等によく潜られるダンジョンだ。


普通はダンジョンを潜り出して3年~5年の間に潜られる事が多いのだが、レンちゃんはダンジョン配信を始めるのと同じ、1年前にダンジョンを潜り始めて、今では中級者向けダンジョンの深層を安定して潜れる程になっている。

これが彼女が超新星と呼ばれる所以だ。


「そい!てやっと!」


そして6時間程潜ると、レンちゃんは順調にダンジョンを攻略していき、中層を抜け深層に着いた。


【おー、順調だなー、そろそろ休憩スペースか?】

【こういう時地図があると便利なのになー】

【クソダンジョン仕様その1、毎回ダンジョンの地形が変わっている】

【中に居る人はダンジョンの地形が変わってもなんともない、何故なんだ】

【ファンタジーだからだよ】

【そっか、そうだわ】


「あ、あそこかな?休憩スペース!」


休憩スペースは、何故かダンジョンにある探索者が休憩出来る場所だ。

大体層の初めにあって、そこは何故か魔物が入って来ない。


【良かったー、ずっと休憩無しで進んでたからなー】

【で、休憩スペースということは……】

【やっとだ!もう腹ぺこだぜ!】

【1200¥いつもお世話になってまーす!】


「ふー、では調理を始めましょう!」


【キター!】

【これがねーと夕飯食えねーからなー!】

【もう19時だからな、丁度腹が減ってたんだ!】

【もはやダンジョン飯配信にした方がいいってぐらいに料理が上手いからな!】


休憩スペースは広く、各々自由に料理などを作っている。

今日はあまり人がいないが、人が多い時は料理を分け合ったりしている。

俺は一度も休憩スペースを使っていない。


「では今日は!人気のミノタウロスのカレーです!」


【キタ!キタ!】

【助かる】

【レンちゃんのダンジョン飯はマージで美味そう】

【レンちゃんの得意料理のカレーだ!!】


ダンジョン飯とは、ダンジョンでとれた魔物の肉等を使った料理の事である。

魔物からドロップする素材を有効活用して消費する事で、新鮮な素材を勿体なくないように料理として使おうという事である。


「まず食材はカレールー1箱の半分、使う分だけラッピングしておくとゴミが減りますよ!そしてメインのミノタウロスの肉!豪華に400gです!そして玉ねぎ、人参、じゃがいもを1つずつ、サラダ油、水を600ml程」


レンちゃんはダンジョン配信を始める前、いや小さい頃から親に代わって料理をしていた為、とても料理が上手だ。

そしてその料理の、完成度から会社から疲れて帰って来た層にはそれだけで癒しなのだそうだ。


【おー!豪華!】

【美味そうな肉だな!】

【剥ぎ取りじゃなくてドロップだから死体とかが邪魔にならないのいいよな】

【肉の量多いなー、胃もたれしそう】


「まず野菜を切ります!よく洗ってからしてくださいね!玉ねぎは皮を向き微塵切りにします、人参とじゃがいもを角切りにします、皮は栄養があるので残しておきましょう!、ゴミも減りますし」


【ゴミ減らせー】

【迷惑な奴はそこら辺にゴミ放り出すからな】

【俺なんて戦闘中にペットボトルのゴミで転んだぜ、そのせいで死んだし】

【早く成仏しろ】

【生きよそなたは可哀想】


「そしたらミノタウロスの肉と野菜を弱火から中火でじっくり炒めます」


【この時点で美味しそう】

【美味しい】

【美味しかった】

【ご馳走様でした】


「いい感じに沸騰してきたので火を弱め、アクをとったら更に弱火~中火で炒めます、食材が柔らかくなるといい感じです」


【なるほどー】

【今日はもうこれでいいや】

【うんまそー!】


「そしたら一旦火を止めて、カレールーをよく溶かし、とろみが出るまで弱火で煮込みます」


【いい匂い!画面越しだけど】

【カレールーいれると一気にカレーって感じするな】

【カレー美味そう!】


「スパイスで味を整えたら……はい完成!

ミノタウロスのカレーのでっきあっがりー!」


輝くカレー、画面越しでも伝わって来そうな匂い、湯気がでて、具材の一つ一つが星のように輝いて見える。


【美味そー!】

【食欲そそられるなー!】

【美味しそうなカレー!腹減ってきた!】

【美味そうやなぁ……!】


「んー!美味しい!特にこのミノタウロスの肉!口の中で溶けるー!」


【美味そう】

【美味そう】

【美味そう】

【美味そう】


美味そう

腹が減った俺は、弁当箱からおにぎりを取り出して食べた。

レンちゃんの配信を見ていると、不思議と笑顔になって来るし、こんな質素なおにぎりも美味しく感じる。


「ご馳走様でしたー!……では、カレーも完食したところで!深層探索再開しましょー!」


?、いつもならここら辺で切り上げるところなのだが、今日は本気で深層を探索するつもりかな。


「今日はこのダンジョン制覇を目指します!」


……!制覇か、大きく出たな。

さっき言ったように、中級ダンジョンは中級者のよく通うダンジョンである。

中層ダンジョンクリアは、言わば中級者の卒業で、上級ダンジョンに上がり上級者と認められる分かりやすい方法だ。


【!?それってソロで!?】

【上級ダンジョンの中層でも問題なく通用してたし、ボス相手でもソロで戦えそうだぞ】

【ソロは危険だよレンちゃん!ボスは集団戦前提でしょ!?】

【いや、このダンジョンのボスはソロ向けだ】


コメント欄も意見が割れているようだ、ボスとは、ダンジョンの深層の奥にいる魔物の事だ、その強さ普通のモンスターよりずっと強い程。

でもレンちゃんならいけるだろう、強いし強いし何より強い。

それにコメント欄でも言われてるように、このダンジョンのボスはクレイジーウルフ、中型の大きさで素早いがソロでも攻防がしっかりと出来る人なら問題なく突破できるソロ向けのボスだ。

まぁ、俺もレンちゃんと同じダンジョンの深層まで来てんだけど、今まで戦った事ないから分からないが。


「大丈夫ですよ!しっかりと準備してきましたし、あっ!ほらそこ、ボスがいそう…………いた!?ってクレイジーウルフじゃない!?!?」


そこにいたのは、巨大な岩のゴーレム。

8mは優に超えそうな程な巨大を岩でつくられており、目が無く、巨大な岩をレンガのようにして積み立てられている。


【なんあれ!!クレイジーウルフちゃうやん!!】

【レアボスだよレアボス!それも滅多に見ない!数万分の1の確率と言われるレアボスだよ!!】

【やけに説明口調だな】

【やばくね!!??あれって上級の深層ボスレベルのやつだわ!!しかもソロ攻略はほぼ無理と言われている奴だわ!!】


『ぐぁぁぁお!!!!!』

「ヤバイヤバイヤバイ!」


【うわヤバいって誰か突入しろ!!】

【無理だわ!!】

【言い出しっぺの法則!!】

【誰か助けて!!】

【レンちゃん!!逃げて!!】

【逃げろー!!マジで!!】


これは……ヤバいな。

それも大分ヤバい。

最悪どころか確実に死ぬ。


「待っててレンちゃんー!!」

俺はダンジョンの奥へと全力で走った。


▽△▽


あぁ、これヤバいな。

ヤバいし、どれくらいヤバいかと言うとヤバいくらいヤバい。

つまり……


「ヤバいよー!!!」


【ヤバい!!】

【ヤバい!!逃げろー!!逃げてくれ!!】

【ゴーレムヤバい!! 】

【うわー!!ヤバいって!!】


……私は恋筋 恋(こいすじ れん)、1年前にレンというダンジョン配信を始めました。

ピンクと赤の髪色のツインテール、右目がピンク、左目が赤のオッドアイ。

好きな食べ物はスターゲイジーパイ。

嫌いな食べ物は煮物。

ダンジョン配信を始めたきっかけは、友達に誘われた事。

命の危険がある事なんてしたくないって思ってたけど、楽しかったなー、皆は面白い反応をくれるし、褒めてくれるし、一緒に楽しんでくれる。

よく見てくれる視聴者さんは嬉しかったし、スパチャも嬉しかった。

単純にお金が貰えた事じゃなくて、スパチャをする価値があるって思ってくれたから。

今では登録者50万人越えの人気ダンジョン配信者になった。

調子に乗って中級の深層のボスに挑んだまでは良かったけど、まさかのレアボスでしかもソロ攻略無理なゴーレム。

私は運が悪かった訳でもないし、逆に運が良かったくらいだ。

善行も積んできた。

だけど、こういう時って無常だよね、神様は。

今もゴーレムの投石が私を襲う。

ゴーレムの右腕が私を捉える、殴ろうとしている。

あぁ、やっぱり……


「回想流しても無駄だったー!!!」


【何言ってんだ!!】

【混乱している!?】

【回想ってなに!?】

【しっかりしろ!!】


『ぐぁぁぁお!!!』


ゴーレムの拳が完全に私を捉えた、あぁ、ホントのホントにダメだなこれ。


━その瞬間、ピンクと赤の光が見え、ゴーレムの腕が粉々に砕けた


「!?!?なに!?」


【どうなっとんじゃ!!】

【なんかピンクと赤のペンラ!?】

【あれペンライトじゃなくてビームソード的なやつじゃ!?】

【なんでもいいから助かったのか!?】


『ぐぁぁぁ!!??』


そして、ゴーレムの足も瞬間的に砕ける。

後は体、頭と順に壊れていった。


そして、砂煙が舞い、姿こそ見えないものの、影だけが見えた


「あ!あの!」

「織田です、偶々同じダンジョンにいたので……あ」

「え?織田さん!?」

「すいません帰ります」

「……え!?」


【織田さん!?】

【何故織田さんが!?】

【なんで帰った!?】

【織田さん何者!?】

【織田さんお前はなんなんだ!?】


織田さんの姿は一瞬で消えた。

なんで!?


「ちょっと!!待ってください!!」


【織田ァ!】

【俺たちのレンちゃんを助けてくれてありがとう!!】

【なんか凄い早かったし何者なんだ!?】

【マジでなんなん!?あとありがとう!!】


なんで消えたの!?わざわざ帰る必要なかったのに……。


「まだお礼してないのに……」


【なんかあれだな、アサシンみたいだな】

【織田アサシン?】

【オタ活アサシンは?】

【決定】

【可決】

【織田:50000¥おい勝手にあだ名決めんな】

【でたわね!?】

【なんで帰ったねんお前】

【あの状況で帰ってスパチャしてるお前の肝っ玉すげぇよ】


□◇□


オタクな俺だけど、ダンジョン配信者を推してもいいですか?~何故か推しを助けてオタ活アサシンと呼ばれてました~ 1話をお読み頂きありがとうございました!


作品を公開するのは初めてで、不定期投稿になりますが、週4~5話投稿を目指して頑張って執筆しています!


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