忘れられた夏の記憶 〜廃屋に封じられた少年たちの秘密〜

藤澤勇樹

第1話

夜の帳が下り、月明かりが窓辺の鉢植えに影を作る中、高校生の青木は、必死で古びた日記をめくっていた。


彼の目は恐怖に開かれ、息は粗く、心臓は激しく打っていた。


青木の日記には、毎日の何気ない出来事が淡々と綴られているだけだった。


しかし、ページをまくるたびに、彼の視線は過去の記憶へと引きずられていく。


そこには、「ある日」への言及がなかった。


まるで、その日が存在しなかったかのように。


彼は思い出した。


仲間たちとの夏の探検、まわしき廃屋、そして約束された恐怖の始まりを。


◇◇◇


翌朝、青木は学校に向かいながら、前日の夜の出来事を思い返していた。


校舎に向かう道すがら、彼は無意識にその廃屋へと足を運んでいた。


友人の松本が肩を叩き、現実に引き戻される。


彼らは廃屋の噂について話し合い、松本は半信半疑で笑った。


「怖がりだな、青木。ただの廃屋に何があるっていうんだ?」


青木は返答にきゅうし、ただ、内心で松本が知らない恐怖を思っていた。


彼の心の中には、あの日見たものが鮮明に焼き付いていた。


壁に書かれた不気味な呪文、そしてそれを囲むように浮かぶ無数の顔。


彼はそれがただの落書きでないことを知っていた。


◇◇◇


青木の周りで奇妙な出来事が起こり始めた。


青木の友人が次々と欠席し、彼らの席が空っぽになる。


先生たちは病気が流行っていると噂したが、青木はその裏に何か他の事実があると確信していた。


彼は再び廃屋を訪れ、答えを探そうとした。


しかし、そこにはもはや廃屋の面影はなく、ただの空き地と化していた。


あの恐怖は、どこへ消えたのだろう。


青木は立ち尽くし、何かを悟ったように呟いた。


「僕らは何かを呼び覚ましたんだ。」


その晩、青木の家の電話が鳴り、彼は戦慄した。


受話器から聞こえるのは、かすかな囁き声と、遠くで笑う子供の声だった。


そして、その声は言った。


「青木くん、遊ぼうよ…」


◇◇◇


学校では、あの夏の日以来行方不明になった生徒たちの噂が囁かれていた。


青木は自分の恐怖と向き合い、あの日の真実を明かすことを決意する。


彼は、最後の手がかりとして残された日記のページを開いた。


そこには、彼の記憶にはない筆跡で書かれた言葉があった。


「俺たちは、永遠に遊べる場所を見つけたんだ。」


青木は、その文面から突き付けられる真実、彼らが永遠の恐怖を手に入れたことを悟った。


彼は涙を流しながら、友人たちの顔を思い出し、そして深いため息と共につぶやいた。


「こんな永遠は、いらなかった…」


青木は自らの日記を火に投じ、炎が青春の記憶を飲み込むのを見守りながら、恐怖と共に消えていく友人たちへの別れを告げた。


静かな夜が再び訪れ、月明かりだけが彼の涙を照らした。

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忘れられた夏の記憶 〜廃屋に封じられた少年たちの秘密〜 藤澤勇樹 @yuki_fujisawa

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