異世界転生狂奏曲

桔梗遥斗

第1話 始まりの森

遠くから声が聞こえる。ぽかぽかとした陽気、小鳥の囀り。生き急いでる俺にとっては関係のないことだと思っていた。あんなことが起こるまでは……



俺は音場晴人。藤宮高等学校2年生だ。文武両道、容姿端麗のパーフェクト男子!とうまくいく訳もなく全て平均的だ。何かずば抜けて得意なこともなくひっそりとクラスの端で音楽を堪能している。

どんな音楽も食わず嫌いせずに聞いている。最近はクラシックがマイブームだ。聞いてるだけで心が落ち着く。


少し時間が経った。2時間くらいか?皆が次の授業が体育ということでウキウキしている。まあ俺にはあまり関係ない。サッカーでもバスケでも、運動神経のいい奴にボールをあげればいいんだからな。これで単位がもらえるなら簡単なもんだ。


授業が始まる。入念に体操をしておこう。ってもほぼ走んないけどね笑。”やってる風”っていうのが重要なんだよ。


「パス練習しとけー」

これは重要だ。陰キャの俺がパスすらまともにできなかったら陽キャに何を言われるかわからない。常に気を張っていこう。

「あぶなーーい!!!」


バコッ


なんだ?後ろから頭に強い衝撃が走る。目の前の景色がどんどん暗くなり、力も抜けてきた。これってもしかして、かなりまずい?



目が覚めた。いや、目”は”覚めたのかもしれない。ここはどこだ?

さっきまでの風景とは一変。とてつもない森の中。いやいや、起きるにしてもグラウンドか保健室だろ。こんなのは夢に違いない。それに、こんな森の中じゃいつどこから何が襲ってきてもおかしくない。さっさと安全な村や街に行かなければ。「あれは…?」煙が見える。人がいるかもしれない。まっすぐ行けばすぐに着くだろう。


待てよ、何かの音がする。人ではない、何か四足で歩いているようなもの。でもそんなに近くない。大体120メートルくらい先か。ん?待てよ。なんで正確な位置までわかるんだ?俺にはそんな優秀な機能はついていないぞ?



この世界って、もしや…。


とりあえず俺は森の中にいる何かから逃げるように森を走った。先ほど遠くに見えていた煙もすぐそこに見えてきた。

「焚き火だ!人もいる!」思わず声が漏れた。

「誰だ!他国のスパイか?姿を表せ!」

強面の男がいた。いや、『漢』だろう。しかも3人。逃げれるわけがない。

「あのぉー。ここってどこですか?」

「なんだ?何も知らないのにここに来たのか?何を使って?」

「何を使ってと聞かれても…急にここに来たとしか言えないんです。」

「ああ。そういえば今日は召喚儀祭だったな!」

「なんですかそれ?」

「俺らの街では一年に一回若者たちを違う世界から召喚するんだよ。その時召喚された奴らは何か能力みたいなものが使えるようになるんだよ。それがどんなのかは調べねえと分かんねえんだけどな。」

やはり、さっき俺が生き物の場所が正確に分かったのは付与された能力だったのか。

「それってどこに行けばわかるんですか?」

「俺らの街だよ。ちょうど狩りも終わったとこだし、一緒に街に行くか!」


その男は俺に有無を言わせずに街へと連れて行った。


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