第11話・剣聖リヒトに教えを乞え、ゴードよ!
「こりゃぁたいへんだ」
ゴードの武器、【
左手に装着している【
ゴードは
四天王時代に勇者バルス・テイトにこの弱点は指摘されていた。
「ゴード、さっきの
バルスは息を切らしながら、剣にこびりついた血をぬぐった。
「あぁ、武器の特殊攻撃は全くの無効。爪の切り裂き攻撃すら、痛みを感じない奴らには特に意味もないしな」
ゴードは爪をじっと見た。
「秘匿武器同士なら、【
「バカ言うなよ、それって、アレだろ。
ゴードの悪い癖が出た。やりたくないことやできないことは、ゴチャゴチャと
「そうだよ、剣聖レベルの秘儀だ。寸分の狂いもなく同時に、右手・左手の武器を敵にめがけて繰り出す。シンプルだろ。まぁ、秘匿武器を二本持ってなきゃできない芸当だが、お前には無理かな」
バルスはニヤニヤしながらゴードを試すように言った。
「それな、俺も何度もやってみたが、タイミングが合わん。爪は比較的【
ゴードはバルス提案を後ろ向きに退けた。こういうところが、ゴードの弱さなのだ。
「そういうと思ってたよ。ゴード、ここ行って来いよ」
バルスは鎧の内側から褪せた封筒を取り出し、ゴードに手渡した。
ゴードは二十歳の頃、故郷・ガダルニア王国を出た。
一度国を出たものは、
「俺に、ガダルニアに行けと!」
ゴードは
「あぁ、このままじゃダメだ。ガダルニアのリヒト・スタインウェイに教えを乞え」
リヒト・スタインウェイ、ドワーフながらにして斧ではなく剣を主力武器とし、双剣の使い手。ドワーフとは思えない身長は180cmほどある。均整のとれた身体は、俊敏な動きで敵を
リヒトは既に一線からは退いている。その理由は不明だった。過去に弟子にとったものは二人。その名は明かされていないが双子の姉妹ということは、酒場の
「リヒト
「この手紙は俺の出身、オーギュスター公国の王がガダルニア三世に宛てたものだ」
テイトは続けた。
「まぁ簡単に言うと、二人は親友ってことだ。困ったらガダルニア三世を頼れと。この手紙を持ってりゃ、出奔したゴードだってガダルニア王国に再入国も可能だ。もちろん、国王への
「その話は何度も聞いた。若いころは歴史でも習ったよ」
「じゃぁ、行ってくれるか?」
テイトはゴードに肩を
「あぁ、考えておく。母さんにも会いたいしな」
「よし!じゃぁ、いったんパーティ―は解散だ」
パーティーと言っても、この頃はまだテイトとゴードの二人だけだった。バディという方がしっくりくる。リム・ウェルとセイトン・アシュフォードを迎え、四天王と恐れられるようになるのはもう少し先のことだ。
「ゴード!ぼーっとしてんじゃないわよ」
セイトンがゴードに放たれたスケルトンマスターたちの一撃を【
ジャンヌは残り三つの結界のうち、二つが火柱を上げるのを確認した。あとひとつだ。
「ジャーンヌ!まだか!」
城壁沿いの
いじめっ子ファルが魔法学院の生徒たちを従えて、弓を放っている。マジックアローと呼ばれる自動追尾型の魔法だ。見習い僧侶が放つマジックアローは、爆竹のようなものだ。敵への注意を引き付ける程度の効果しかない。だがファルはスケルトンマスターをめがけて放つ。セイトンやゴードへの援護射撃のつもりだ。
「まだだ!あとひとつ。オーギュスター公国の残りひとつ!」
「はやくしてくれ、みんな家族がアンデッド化しちまったはずなんだ!」
ファルの声はみんなの声だった。城外の町ウッドボーンはアンデッドたちに飲み込まれた。ファルはもちろんジャンヌの家も、ロキの家もウッドバルト魔法学院の生徒たちの家族は、おそらくアンデッド化している。
セイトン、ゴードたちが鬼人の如く戦いに興じる。本能の
三十万のアンデッド軍勢は消滅こそしないものの、多くが再起不能として倒れ込んでいた。ジャンヌの100メートル以内に倒された敵は一人もいない。ジャンヌの右親指に
リム王国にて
「そうか、残り30万は十二聖騎士団を突破したか」
リム・ウェルはウッドバルト王国
「ネクロマンサーのルイ様が率いていらっしゃいます」
侍従がリムに申し送りした。
リムの表情は満足げだ。切れ長の眼、長いまつげ、ふっくらとハリのある唇。顔には皺ひとつなく、血色はいい。魔力が充実している証だ。長身の身体をすっぽりと覆う深紅のローブ、右手には【
セイトンにも劣らぬ
リムはセイトンを愛していた。今なお、その叶わぬ愛を糧にしていたのだった。
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