日々に潤いを。

ちいろ

一日目 出会い

この生活に疲れた。


そう思ったのは何度目だろうか。


なにかに溺れたい。


そう思うのも何度目なんだろう。


時計は昼の12時を過ぎたあたりで、部屋の中は時計の秒針の的確なカウントをこだまさせていた。


ふと見上げる天井。投げ捨てられたビール缶、散乱する衣類、惣菜用のプラスチックのケースが雑多に散らかった部屋。


ただ過ぎていく土曜日。


なんか…もう飽きたな。


そこら辺に脱ぎ捨てられたのか洗濯して乾いたのを捨て去っていたのかわからない衣服をもそもそと着込み、外へ出る。


吹き付ける風は冷たかった。


これから僕はホームセンターにロープとフック、そしてネジとドライバーを買いに行く。


この際必要なネジ径は…破断係数は…なんてことを考えながら歩く。


久しぶりに自分のしたいことを、考えたいことを考えられている気がして、少しだけ息が弾む。


ホームセンターへの道すがら、ふといつも通らない道を通ってみたくなった。


いたって普通の路地が今日はなんだかとってもキラキラして見えた気がしたからだ。


そんな道を右へ左へと移動して、

たどり着いたのはペットショップだった。


どこで道を間違えたんだろう。

引き返そうか。

そう思った矢先、鼻をくすぐる匂いが、今まで生活してきた中で嗅いだことのないにおいに体がもっていかれる。


今日はどうかしている。そんな日だった。いつも気にならないようなことが気になって興味が出た。いつもは直線的に進む道も今日は蛇行してみたくなった。


ほんとうにどうかしている。


部屋に新しく生物が増えるなんて。


部屋から一人存在を消そうとしていたのに、空間を空間でたらしめようとしたのに、まさか増えるなんて思いもしなかった。


今日はどうかしてる。本当にどうかしてる。


今までこの部屋に対してなんとも思っていなかったのに、急にごみであふれていることに気になるなんて。


自分の寝る場所さえ、ろくに与えられてないこの部屋にまさかもう一つ寝床を拵えてやらなくちゃいけないなんて。思いもしなかった。


ほんとうに今日はどうかしてる。


でも、じゃあ、明日でもいいか。


そう思った。

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