転ぶ舞姫は彩のない明日を知る

墨ノ江 華丹

プロローグ

第1話「 エンカウント 」


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 質問 「たった一度の失敗で、

  人生は変わってしまうと思いますか?」


 回答 「はい。」


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 都内某所ダンススタジオの一室。

 張り詰めた空気の中、聞こえるのはエアコンの作動音と紙をめくる音。

 一面が鏡張かがみばりの部屋に並ぶパイプ椅子、そこに姿勢しせい良く座る僕たち受験生じゅけんせい

 向かいには長机ながづくえを並べ、各々のスタイルで座っている審査員しんさいんの方々。


 十月下旬におこなわれた芸能科げいのうか入学オーディション。

 その場の全員の視線が向けられている中、


 「 彼女は、ころんだ。」


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 桜色に包まれた学舎まなびや私立大谷しりつだいや高等学校 普通科ふつうかに通う二年生 並木創太なみきそうた

 あたたかな陽気ようきの中、彼は自分のクラスを確認するために校門前へ足を運んでいた。


「なんで二年になる時にだけ、クラスえがあるんですかねぇ。」


 一年生の時のクラスでは仲の良い友達も居たし、クラスの空気も悪くはなかった。

 なんならそのまま三年間同じでも良かったのだが、無情むじょうにもクラスえが行われてしまった。

 若干じゃっかん不満ふまんらした創太そうた背後うしろから、一人の女子生徒が声をかけてきた。


一説いっせつによりますと、クラス替えは生徒の人間関係が固定しないように実施じっしするらしいですよ?」


 じゃあなんで三年になる時にはクラス替えがないんだとは、面倒だし言わないでおこう。


「桜色のかがや季節きせつに、いろどりある新しい出会いをってか?」

「先生方に、そんな青春せいしゅんじみた考えはないと思いますけど。」

「現実的だな。もっと色のある答えをくれてもいいんじゃないか?」


そう冗談混じょうだんまじりに創太そうたが言うと、


「……わたしには無関係ですから。」


 どこかあきれた様子で、彼女は答える。

 これ以上何か話す気にもならなかったので、自分のクラスを確認することにした。


「えぇっとぉ…、おれの名前は…っと。」

「ありました。」

「え?」

「あなたの名前、わたしと同じクラスですよ。」


 そう言って彼女がゆびを刺す先には、たしかに自分の名前があった。

 この学校は名前順ではなく、なぜか成績せいせき順でクラス分けをり出している。

 さすがは私立、あとで名前順を確認するのが面倒めんどうだ。


「…なんでおれの名前を?きみの名前は?」


 彼女は答えるように、すでにしているゆびを上の方に動かす。


 七里 結衣ゆい


 それが彼女の名前らしい。


「しちり…?なな…さ」

「ななさとです。」


 今言おうとしたのに。

 いや、そんなことよりも


「……クラスで一位。」


 呆気あっけに取られているのもつかの間、校門前に人だかりができていた。

 しかし、どうやらみんなクラス表を確認しに来たわけではいようだ。


 大谷だいや高校にあるもう一つの学科。

 芸能科げいのうかの生徒が、登校してきたのである。

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転ぶ舞姫は彩のない明日を知る 墨ノ江 華丹 @katan_suminoe

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