第15話 竹串の記憶

シホはいつものように、静かな夜、竹串を咥えながらアパートの一室で過ごしていた。その部屋は、彼女が孤独な児童としてこの世界に残されてからの、唯一の居場所だった。部屋の隅には、かつて家族で撮った写真が飾られており、その中には笑顔の両親と、竹串を咥えた弟の姿があった。


ある夜、ケトル人対策課の刑事たちとの作戦会議の後、一人の刑事がシホに尋ねた。「シホ、いつも竹串を咥えてるけど、その理由は何?」


シホは少し間を置いてから、静かに答えた。「これは…弟がよく咥えていたんだ。彼はいつも竹串をくわえながら、庭を駆け回っていた。」


その言葉には、遠い記憶と深い悲しみが込められていた。シホは幼い頃、突然の事故で家族を失い、一人ぼっちになった。その後、両親の知り合いであった現在のアパートの大家が彼女を引き取り、部屋を提供してくれたのだった。


「竹串を咥えることで、どこかでまだ一緒にいられる気がするんだ。」シホは遠い目をしながら、さらに付け加えた。「それは、彼らを忘れないため、そして、いつか再会できることを信じて…」


その夜、シホは久しぶりに、家族の写真の前で時間を過ごした。竹串を手に、静かに話しかけるように、亡き家族への想いを馳せた。彼女の心の中には、常に両親や弟への深い愛と、失われた日々への切ない憧れが存在していた。


竹串は、シホにとってただの癖や習慣ではなく、愛する家族との絆を象徴するものだった。それは、彼女が直面する数々の困難や闘いの中でも、彼女の心を支え、勇気を与えてくれる大切な存在だった。

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