ケトル人の影

第4話 変わりゆく影

漆黒の雨が街を覆っていた。その中で、シホは慎重に公園の中心部へと進んでいた。彼女の目の前で、恐ろしい変化が起きていた。雨に打たれた人々の体が、徐々に霧のように薄れ、透明になっていく。それは、人が鯖に変えられていく瞬間だった。

シホはその場面に呆然と立ち尽くし、その悲惨さに言葉を失った。人々の体は霧になり、やがて完全に消えてなくなった。その場所には、ぽつんと捨てられた衣服だけが残されている。彼らの魂は、どこか遠くへと持ち去られたようだった。

ケトル人は高らかに笑いながら言った。「我々の力は、人間の理解を超えている。恐れ、そして絶望せよ！」

シホは怒りと悲しみを胸に、脇差を握りしめた。彼女はケトル人に向かって突進し、一撃を加えたが、ケトル人は身を軽くかわし、反撃に出た。シホはかろうじてその攻撃を避けたが、雨がますます激しくなり、視界はますます悪くなっていった。

その時、アパートの住人の一人、老婦人がシホの近くに現れた。彼女はケトル人に向かって何かを叫んだが、その瞬間、彼女の体も霧のように変わり始めた。

シホは絶望的な叫び声を上げ、老婦人に手を伸ばしたが、間に合わなかった。老婦人の体は完全に霧となり、消えてしまった。

「なぜ…なぜこんなことを…」シホは涙を流しながら叫んだ。しかし、ケトル人はただ冷たく笑うだけだった。

この夜、シホはケトル人の恐ろしい力を目の当たりにし、自分自身の無力さを痛感した。彼女は雨の中、立ち尽くし、失われた魂たちを思い、新たな決意を固めるのだった。