第30話 昼休み

 *


「えええ??教室が洪水に!?昨日そんなことがあったんだ!わたしも見たかったな〜」


「本当にすごかったんだよ。ね?ヤソみん」


「ま、まあ、うん」


「午後の魔術演習で見たいな〜ヤソガミくんの魔法」


「ミアちゃんにも見せてあげたいよ。でもヤソみんは今日はやらせてもらえなかったりしてね」


「それはありえるな」


 フェエルとミアと三人で過ごす昼休み。

 かつてぼっちだった俺にとっては感慨深いものがある。

 フェエルは大人しいけどイイ奴だし、ミアは明るくて性格も良さそうだ。

 このまま楽しく穏やかに学校生活が送れたらいいなぁ。

 そう思えば思うほど、ヤツのことが気になってくる。

 今、食堂内にヤツらの姿は確認できない。

 このタイミングで訊いてしまうか。


「ところで、ミアにききたいことがあるんだけどさ」


「なあに?」


「あのエマとかいうのことなんだけど」


「えっ?あ、うん。エマちゃんがどうかしたの?」


「どんな娘なのかな〜と思ってさ。ミアは友達なんだろ?」


「うん。最初にエマちゃんのほうから声をかけてくれて友達になったんだ。それからはよく遊びに誘ってくれたり...つんけんしてるけどイイコだと思うよ?」


「イイコか......」


「エマちゃん、ああ見えて面倒見もいいからね。人気もあると思うよ?」


 確かにエマは他の女子たちみんなと仲良さそうにしていた。

 人気者っぽい雰囲気もあった。

 だが、あのギャルお嬢が本当に面倒見がいいのか?

 素直そうなミアの話に嘘偽りがあるようにも思えないけど。

 俺が疑心暗鬼になっているだけだろうか。


「ひょっとしてヤソガミくん...」


 なにやらミアがいぶかしげな目を向けてきた。


「エマちゃんのこと......き、気になるとか?」


「それはない」


 食い気味にバッサリ否定。


「むしろ苦手だ。あういうのは」


「で、でもカワイイよ?」


「フェエルのほうが可愛いと思う」


「へっ??ヤソみん??」


 完全に意表を突かれたフェエル。


「い、いいいいきなりなにを言ってるの??」


 狼狽するフェエルに向かって俺はキッパリと言った。


「俺は事実を言っただけだ」


 にわかにはわわわとなったフェエルは両手で顔を覆った。

 さすがフェエル。

 リアクションも可愛い。

 良いものを見せてもらった。

 これで午後の授業も頑張れるぞ。


「ふたりって、昨日知り合ったばっかりなのに仲良いねえ......」


 俺たちを見て、ミアは苦笑いするのみだった。

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