第21話 魔術演習②
「い、イナバ!?」
「神使の白兎であるオイラを
「だ、だって、朝からずっと寝っぱなしだったじゃんか!」
「昼には起きたわ!」
「だったら声を上げてくれれば出したのに!」
「上げたわ!じゃがお主どっか行ってたじゃろ!」
「食堂に行ってたけど」
「その間に散々声を上げたわ!じゃが一向にお主は応えん!それでオイラは疲れてぐったりしてしまったんじゃ!」
「もう今出したからいいじゃんか!」
「良くないわ!動物愛護団体から訴えられるぞ!」
イナバはぷんぷんと怒り散らした。
でも確かに、イナバのことを忘れていたのは事実。
「あっ」
不意に
案の定、みんなの注目が集まっていた。
「あ、あの、これは......」
「オイラは神使の白兎、イナバじゃ!よ~く覚えておくがよい!」
俺の説明よりも早くイナバが偉そうに自己紹介した。
「お、おい、あれ」
「兎がしゃべっている?」
「使い魔じゃね?」
「あんな弱そうな使い魔いるか?」
「でも神使とか言わなかったか?」
教室内がザワつく。
そんな中、不良どもの高笑いが起こった。
「ギャーッハッハ!なんだそれ?魔術で作ったウサギのぬいぐるみかぁ?オマエいくつだよ?」
完全に人を馬鹿にしきってトッパーが
「で、その可愛いウサギちゃんを使ってどんな魔法を使うんだ?」
「なんじゃ?キサマは。このオイラに向かって」
「お、おいイナバ」
「小僧は黙っておれ。おいそこのキサマ。文句があるならハッキリと言うてみい」
「そこのキサマだと?おれはトッパーだ。ブチ殺すぞクソウサギ」
「ならトッパーとやら。これからお主の度肝を抜いてやる。覚悟しておれ」
「ああ?やろうってのか?」
「違う。おいハウ教師。今はなんの授業じゃ?」
イナバは先生に振った。
「ヤソガミ少年が魔法を使うとか聞こえた気がするが」
「はい。今からヤソガミくんに魔法を披露してもらうところです」
「ちょうどいい。おいトッパー生徒」
「ああ?」
「黙ってヤソガミ少年の魔法を見ておれ」
「まさかそいつの魔法がおれの度肝を抜くってのか?」
「そういうことじゃ」
「おいイナバ!勝手にハードル上げるなよ!」
「何を言っておる。プテラスキングを相手にするよりは簡単じゃろ?」
「そ、それは、そうかもだけど」
「いいからお主は自信を持ってやればいいんじゃ。さあやるぞ!」
そう言ってイナバは御神札を持ってぴょーんと頭に乗ってきた。
「ほれ、札じゃ」
イナバから御神札を受け取ると、頭上にウサギを乗せたまま前に出ていった。
参ったな......と思ったけど、確かにイナバの言うとおりでもある。
死の危険を伴いながら魔鳥獣を相手にすることに比べたら遥かにマシだ。
「ただ......」
「どうした?小僧」
「いや、逆の心配っていうか」
「逆?」
「学校を破壊しないかっていう...」
「いいか?魔法は集中とイメージじゃ。確かにお主の魔法は超強力。じゃが、しっかりとその力を抑え込めれば問題はない」
「抑え込むっていってもどうやって?」
「強く集中してその力を最小限に抑えるイメージをするんじゃ。どの神の力を使うかも重要じゃな」
「言うだけなら簡単だけどさ」
「いいからやれ!」
「いてっ」
またイナバに殴られた。
「だからいきなり殴るなよ」
「小僧がグズグスしとるからじゃ!」
「だって説明がざっくりすぎて」
「ここは学校じゃ。魔術への知見ある教師もおる。なにかあっても大丈夫なようにはなっているはずじゃ。なんせ魔法学園じゃからな!」
そうだ。
ここは魔法学園。
魔法を学ぶ学校だ。
ここで魔法を使うのを怖がっていたら何もできないじゃないか。
「よしっ」
御神札を構えた。
また視線が集まる。
みんな不思議そうに俺を見ている。
白兎を連れて御神札を使う魔術師って......やっぱり変なのかな。
いやそんなことはどうでもいい。
しっかり集中するんだ。
「......」
神様は誰がいいだろう。
安全そうなのがいいけど、イナバが大胆に見栄を切った手前あまり地味なのも良くない。
となると......。
「〔
御神札に指で文字をなぞって読み上げた。
クラオカミは水の神様。
力を抑えられなければ教室が水浸しになるかもだけど...最悪の場合でもそれで済むなら。
「えっ??」
みんなが一斉に驚声を上げた。
「ええ?」
自分も驚いた。
御神札から文字が浮かび上がる。
魔力を帯びてピカーッと光り出した...と思ったら、御神札の先からとんでもないものが出現したから。
「み、水のヘビ!?いや、これは...」
なんと、水で
「水龍!?どうして!?......あっ!」
そうだ!
ヤバい!
すぐに引っこめなきゃ!
「あれ、引っこめるのって、どうやるんだっけ......」
しまったー!!
力を抑えることばかり考えていて、発動した魔法を中断させることについては完全に失念していた!
「イナバ!これどうやって引っこめるの!?」
「引っ込める?なんでじゃ」
「だってこんなの危険だろ!」
「力を抑えされすれば大丈夫じゃろ。ほら、みんな驚いておるぞ。イイ気味じゃ」
「そんなのん気な!」
「いいから力を抑え込んでみい」
「わかったよ!クソっ!」
必死で力を抑えるように集中する。
ところが水龍はそんなのお構いなし。
ズオォォォォォォッ!!
俺の立つ半径二メートル以内を除いた教室内に、大量の
「うわぁぁぁぁ!!」
激流に呑み込まれる教室。
「ひ、ひぃぃぃ!!助けてー!!」
あんなにイキがっていたトッパーとマイヤーは恐怖の渦で泣き叫んでいた。
「このままじゃみんなが!」
ヤバい!と思ったその時。
思わぬことが起こる。
「あれ?水が?」
なんと、大量の水が安全に一箇所へまとめ上げられるように、ぎゅうっと凝縮された。
それは教室内を洪水から
「ユイちゃん!」
すぐ隣からポランくんが叫んだ。
その声にみんなが一斉に学級委員長のほうへ向く。
「〔
これはジークレフ学級委員長の魔術だろうか?
あんなに荒れ狂っていたはずの水が、まるで新体操のリボンのようになって緩やかにクルクルと螺旋を描いて舞っている。
円の中心には、優雅にフルートを吹く美少女学級委員長がいた。
「す、スゴイ......!」
水は完全にコントロールされている。
......圧倒された。
その能力に。
目を奪われた
その美しさに。
芸術的なまでに水を操る彼女の姿は...まるで
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