救援と覚悟

異様な雰囲気を放つ森を走り続ける。

子供達を伴っているならばそう遠くには行っていないはず……


「あとどれくらいで到着するんだ!?」

「このペースで走れば5分ほどで到着するはずだ!」


とにかく急ぐことしかできない。

みんなの無事を祈りながら必死に走る。

見えた……!

100mほど先に巨大化した熊が見える。


「行くぞ!ジャック!」

「おおよ!」


できるだけ気づかれないよう全速力で接近し横から奇襲を仕掛ける。

しかし直前で気づかれ強固な毛皮に阻まれてしまった。

固い……!


「アルバート!すぐに片付けるぞ!」

「ああ!お前は右から行け!」


挟み撃ちで迅速に倒そうと試みる。

だが数的有利な状況にも関わらず素早く重い一撃を放たれ中々間合いに入ることができない。

このままだとジリ貧になって負けるのは俺たちだ。


「ジャック!俺が隙を作るからとどめは任せたぞ!」


返事を聞く間もなくすぐに一人で突撃する。

いくら熊のパワーが強かろうと防御に専念すればやられることはない。

これでも元王族の護衛を務めてたんだからな。

じっくりと待ちながらチャンスを伺う。

……ここだ!

狙いすました一閃が強固な毛皮をものともせず熊の手を切断する。

いくら凶暴な野生に目覚めようと強烈な痛みに一瞬怯んだ。


「お前はやっぱりすげぇよアルバート!」


後ろで待機していたジャックが完璧なタイミングで飛び出し熊の心臓に向かって突きを放つ。

いくら毛皮が固かろうと突きは流石に防げずジャックの剣は熊の心臓を貫通し絶命させる。


「どうやら片付いたみたいだな……」

「そうだな。お前らは無事か?」


後ろを振り返ると大人は何人か流血したり気絶していたが命の危険があるものはいなさそうだし子供たちにも怪我はなさそうだ。


「た、助かったよジャック……子供たちは全員……なっ!?一人いない!?」


一人いないだって!?

魔物は一匹魔物化すると共鳴して他の個体も魔物化する可能性が増える。

そんな中で子供一人きりなんて……


「誰がいないんだよ!?」

「家具屋のところのミーシャだ……」


ミーシャちゃん!?


「クソ……!どうすれば……!」


一言で言えば絶望的な状況だ。

撤退も難しいのに魔物の危険もあるなかこの広い森で一人の子供を助けなさなければならない。

俺の覚悟は一瞬で決まった。


「俺が助けに行くよ。ジャックはみんなを連れて村に戻ってくれ」

「な!?お前一人に任せることなんてできないだろ!俺も行く!」

「だめだ!村だって安全とは限らないし今ここにいる人たちだって守りながら撤退しないといけない。だからこそ俺一人で行くんだ」


命の危険はあるがそれはミーシャちゃんを見捨てる理由にはならない。

ならば一番全員が生き残る可能性があるこの方法をとるべきだ。


「分かった……だけど絶対に死ぬなよ!ソフィアちゃんが泣くようなことは絶対にするな!」

「ああ。お前こそフィアと村の人達をしっかり守ってくれよ」


ジャックも覚悟を決めたのかテキパキと撤退の指示を出し始める。

俺は振り返ること無く更に森の奥へと走りだした────


◇◆◇


ミーシャちゃんの気配を探りながら必死に森を駆ける。

頼む……無事でいてくれ……!

すると研ぎ澄ました耳が微かな助けを求める声を聞き取る。

ミーシャちゃん!

急いで声が聞こえた方に向かうと岩の陰で隠れているミーシャちゃんを見つけた。


「ミーシャちゃん!」

「おにいちゃん……?」


どうやら怪我は無いようでひとまずホッとする。

ミーシャちゃんは張り詰めていた緊張の糸が切れたのか泣き出してしまった。

とりあえずすぐにここから離れようとしたが先程のような禍々しい気配を感じ取ってしまう。


「やはり魔物化したのは一体だけではなかったか……」


この距離だと逃げ切ることはできない。

ここで迎撃するしか選択肢は残されていなかった。

すぐに熊の魔物が姿を現す。

先手必勝だ!

ミーシャちゃんにいつ危険が及ぶかわからない状況で長期戦は不可能。


「くらえ!」


本気で放った一撃は腕に傷を付けたものの上手くいなされる。

連撃は全て毛皮に防がれるので本気の一撃を繰り出し続ける。

焦る気持ちを抑え的確に急所を狙い続ける。


ミーシャちゃんを巻き込んでしまう可能性があって極限の集中が使えないこともアルバートの焦りを加速させていた。

それでもアルバートは世界トップクラスの武人だ。

獣ごときに負けることはなくついにはアルバートの剣が熊の喉を貫いた。

熊を倒したことにより焦りから開放され安堵が駆け巡る。

しかしその安堵が熊よりも小さいがを狙う禍々しい存在に気づくのを遅らせた。


(な!?猿の魔物だと!?)


見れば猿の魔物は既にミーシャちゃんにかなり接近し鋭い爪を振り下ろす直前だった。

間に合え……!


猿の腕は止まることなく振り下ろされ肉を簡単に切り裂き血が吹き出す。

ミーシャをかばったの体から───



─────────

新作の執筆に取り掛かろうと思うので☆で1日2話投稿を終了致します。

それでも☆を頂けると私、めちゃくちゃ喜びますので☆はください。笑

今後もちゃんと更新はしていきますので!


今後もこの作品をよろしくお願いします!

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