未知の世界と新たな出会い
「さて、セルジシス王国についたわけだけどフィアはどうやって生きたいの?」
「どうやって生きたいって?」
「ほら、都会で商店を出したいとかそういうの」
「なるほど……それじゃあ田舎で畑仕事とかしたい!」
「畑!?」
王女時代から庶民に寄った感性を持ってるのは知ってるけど流石に畑まで行くとは思わなかった。
「えーっと……それはなんで?」
「昔から興味があったんだ〜!10歳くらいのとき地方に視察があったでしょ?」
「ああ、フィアが毒見も無しに村人から渡されたものを口に入れたから俺も含めて国王に説教されたときの話ね」
「その話は忘れて……っ!とにかく私はあのとき村の人達がみんな優しくて温かくて感動したんだ」
「なるほど、それで田舎に住みたいと」
理由が本当にフィアらしいな。
それにフィアは昔から友達がいなくて幼い頃は俺に敬語で話すなという無茶振りな命令をしてきたことがあったほどだ。
都会に比べて不便な分、人と人とのつながりが強い田舎で暮らすのもフィアにとって良いことなのかもしれない。
「むー……今失礼なこと考えてたでしょ」
「そ、そんなことはないよ。フィアなら村の人達全員と仲良くなってそうだなって思っただけだ」
なんかいつもより勘が鋭くない!?
顔には全く出てないはずなんだけど!?
「ふーん、まぁそういうことにしておいてあげる」
どうやら助かったらしい。
まぁフィアなら誰とでも仲良くなれると思うのは本心だ。
人見知りとかあまりしないタイプだしな。
「それじゃあまずは王都に行って情報を集めよう。外国人の俺たちからすればどの村がいいかなんて分からないからな」
「確か王都はそんなに遠くなかったよね?どんな街なのかなぁ」
「どうやらブロードベントの王都より発展してるらしいぞ。珍しいものが見られるかもな」
「それはますます楽しみっ!早く行こ!」
「あ!おい!待てって!」
◇◆◇
「こ、ここがセルジシス王国の王都……?」
「あ、ああ。そうらしいな……」
3日ほどかけてセルジシス王国王都『カチトラス』に到着した俺たち。
そこにはブロードベントでは見たことがない大きさの建物や生活様式や店で溢れかえっていた。
「すごいよ!この街!見たことないものだらけだね!」
「そうだな……!到着したらまず情報収集しようと思ったけど今日は街を回るついでくらいでいいかな」
「賛成!」
そう同意しあって未知の世界へ飛び込もうとした瞬間青年の叫び声が上がった。
「だ、誰かそいつを捕まえてくれ!スリだ!」
声のした方を見ると青年が中年の男を追いかけていた。
中年の男は大きいバックを手にしている。
おそらくアレを盗られたんだろう。
「アル、捕まえられる?」
「余裕だ。任せておけ」
俺はこういうのは自分から探さないが見つけたら逃さないタイプなんでな。
大人しく捕まってもらおう。
スリの進行方向を塞ぐだけでなくこちらからも接近する。
そして盗られたバックの中身が何であっても良いようにこちらもバックをスってから中年の男に背負い投げをキメる。
そして男の身柄は後にやってきた憲兵団に引き渡した。
「あ、ありがとう!本当に助かったよ」
「いや、いいさ。これあんたのだろ?」
俺は取り返したバックを青年に手渡す。
青年は俺たちと同じような年頃だった。
いかにも好青年って感じで顔も整っていた。
「君は本当に強いんだね。しかもバックをスリかえすなんて……」
「そうだよ〜!アルは強いんだよ〜」
「君は……?」
「俺の連れだよ」
「初めまして。ソフィアです」
「俺はジャック=ミドルトンです。このお礼がしたいんけど少し付き合ってくれないかな?」
ジャックと名乗る男から悪意は感じられなかったので俺たちは誘いを受けることにした。
とりあえず俺たちは高級なものじゃなくてもいいから食べたことのないものが食べたかったので近くの定食屋に入ることになった。
◇◆◇
「へーそれで二人はブロードベントから来たんだね」
俺たちが外国人でセルジシスに不慣れなことは特に隠すことでも無いのでソフィアが王女であることと違法入国してきたことを伏せほとんどありのままを話す。
こういうのは嘘だらけだとバレる可能性が高まるので適度に嘘を混ぜるくらいでちょうどいいのだ。
「ああ、畑仕事とかしながら生きようと思ってるんだがいい場所を知らないか?」
「二人は田舎に興味があるのかい!?」
「あ、ああ。そうだな」
急に食い気味で来てびっくりしてしまう。
まさかこの国では畑が禁句とか!?
それとも開発されすぎて田舎がそもそも存在しないとか?
そしてジャックから出た言葉は思いもよらないものだった。
「二人とも……うちの村に来ないかい?」
「「え?」」
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