6人の夫をもった女 4

「水刑?」

とその聴罪師は聞き直した。

「水刑は罪への罰です。ネッカール湖に処刑場があるのです。柱にくくりつけてドラゴンの餌にされます。ドラゴンは罪の臭いがしたら食べないのでまず聴罪であなたに罪を移すのです。そして罪を消した罪人の身体と魂を更にドラゴンによって清め、邑から地方から罪がわくことが二度とないように願うのです」

聴罪師は酷く動揺した表情になった。

「そんな。あなたに何の罪が?殺したわけでもなんでもないじゃないですか。あなたがそんな酷い刑罰を受けるなんてありえない」


私は嬉しかった。そんなことを言ってくれたのは彼が初めてだったから。

「もはやそれは問題じゃないのでしょう。前の水刑から5年もたってしまってドラゴンには生贄が必要なのです。きっと誰でもよかった。私たちは誰が刑に処されるかは気にしないのです。気にしてもいいことはないから。私もそうでした。5年前の生贄が、どんな罪を犯したどんな人かよく知りません。だから私はこの邑の人々を責める権利はないのです。ただ、言いたいのは。」

彼女はためらうように口を噤み、そして思い切ったように言った。

「あなたはこの邑から出て瀕死の男に懇願されたら、身体を開きませんか?結婚を望まれれば断れますか?この邑にいれば当たり前な生き方も、そして唾棄すべき生き方も、外ではまた別物だということを知っていますか?と聞いてみたいです。今信じている当たり前のことがいつまで、どこまで通じることなのかわかっていますか?それを曖昧なままにして他者を裁くことがどんなに酷いことなのか知っていますか?きっと多くのことは当事者にならなければわからないことなのに」

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