第3話 中学校で学ぶニューアースの歴史
目の前に、宇宙空間。
そこで浮かぶシートに座ったまま、両手のスティックを動かす。
目についた小型ロボットを捉え、ビームライフルで撃ち抜いた。
『
「そこはもういい! 後退して、味方と合流しろ!」
『了解!』
指示を出しながらも、手足は動き続ける。
体を包む宇宙服が邪魔で、もどかしい。
「もはや、シルバーソード隊ですら数えるほど……。このシルバー・ブレイズも、いつまで動くか」
言いながらも、加速することで敵艦に――
『
うるさい。
今は、対空砲火をかいくぐっての……。
『和真!』
…………
………
……
…
意識が戻った。
寝ぼけた頭のまま、上体を起こす。
ここは……俺が通っている中学校で、その教室だ。
怒り心頭の先生が教室の前にある教壇に立ったまま、話を続ける。
「和真! 俺の授業中に居眠りとは、良い度胸だな?」
「すみません……」
謝った俺に、ため息を吐いた先生が告げる。
「あとで課題を出す! 個人端末でチェックしておけ」
「はい……」
ペナルティを科されたことで、他の机にいる連中がクスクスと笑った。
やれやれ……。
「話を戻すぞ? このニューアースでは、
“珠音
先生は、後ろの大きなボードに書く。
俺たちの学習机にあるモニターが更新された。
振り返った先生が、授業を続ける。
「地球を旅立ってからのアフターテラは、数万年とも、数億年とも言われている! したがって、今では惑星を改造して入植が始まってからのアフターニューアース、ANが一般的。AN120年だから、人間でいえば生まれたての赤ん坊。その影響で、かつての国よりも移民船団におけるポジションを誇りにする傾向だ。家ではなく所属で識別するのは、その名残……。もっと時間が経てば、かつての地球のようにファミリーネームと個人名になるかもな?」
退屈な授業に、ボーッと考える。
その一方で、先生は説明。
「花形は、移民船団の中で大きな船の士官、あるいはパイロットだ! 今では旧式になる全高15mのヘビーキャル乗りは、『移民船団を守り抜いた』という功績で最高ランクの扱い。それを一気にサイズダウンしたPSは、船内でいくつかの世代を経て、現在の形に落ち着いた。けれど、ブラックボックスを使っているため、思い切った改造ができないんだよ! それだけ珠音博士が天才だったと……。同じ名前をいただいている梨依奈であれば、可能かもしれないな? 期待しているぞ!」
冗談めかした問いかけに、中学生でありながら大人っぽい少女は首肯した。
「……はい」
長い亜麻色の髪は、前のサイドに飾りがあるだけ。
グレーの瞳は知的で、可愛い容姿を引き締めている。
ここで、男子が茶化す。
「同じビッグネームで、適性ゼロの奴もいるけどな?」
「
「うーっす……」
先生のイエローカードで、その男子はしぶしぶ黙った。
続けて指摘する先生。
「シミュレーションでは、和真のほうが上だろ?」
「つっても、ゼロじゃ意味ねえ! PSを纏えないんじゃよォ!」
さっきの今で、武志がイキった。
憎々しげに、自分の席から睨んでくる。
その視線を避けつつ、考えた。
平良和真。
この名前は、ニューアースで憧れの的だ。
月面コロニーの防衛をこなして、移民船団の出発まで守り切った守護神。
愛機のシルバー・ブレイズは、無人のままで合流したらしい。
記録によれば、PSの開発で月面コロニーに残っていた珠音博士を救うため、最後の決戦で立ち寄ったものの――
地球を滅ぼしたマシンクリーガーの艦隊により、脱出できなかった。
そのシミュレーションは、何度もやった。
あれだけの戦力差なら、仕方ないが……。
「そのわりに、シルバー・ブレイズは戻っているんだよな?」
ポツリと
梨依奈だ。
俺が見返せば、彼女はプイッと前を向いた。
「そういう言い方は嫌いです! この星にも、いつマシンクリーガーが攻めてくるやら……。私たちでいがみ合うのは、間違っています!」
別の女子の声。
全員が見れば、キャロリーヌだ。
黒のセミロングで、抹茶のような
さっきの梨依奈と対照的に、スタイルが良く、大学生にも見える美人系。
彼女と同じ名前のご先祖、キャロリーヌ・ル・クリュゼは平良和真と同じシルバーソード隊で、移民船団が出る前後で戦死。
一説によれば、彼の恋人だった。
PS適性は高く、オリジナルと同様にエースパイロットの1人。
中学を卒業したら、そっちのエリート校へ進学するそうだ。
「うっ……」
クラスの人気者。
キャロリーヌに拒絶され、武志は思わず呻いた。
どう見ても、気がある素振りだったしなあ……。
ここで、梨依奈も乗っかる。
「私も、あまり好かない……」
「そ、そこまで言わなくても、いいだろ!?」
哀れ、武志は半泣きに……。
それでも、俺は許さないからな?
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