再度
一度は完全にたたき出されてしまった塔。
僕たちは再度、そこへとやってきていた。
「……神薙さん」
そんな塔の内部を進む中、僕は神薙さんの方に声をかける。
「んっ?何」
「僕が見ないで、って言ったら自分の方は絶対に見ないで視線を下に向けていてほしい」
そして、自分が告げるのはちょっとした注意事項である。
「えっ?何でですか?」
「事情があるの、事情が」
「……事情」
僕の言葉に神薙さんがうなづく。
「そう、事情。僕の切り札上、仕方なくね、ちょっと特殊なんだ。僕の切り札が。見られるとちょっと神薙さんに悪い影響を与えてしまうかもしれない。だから、何があろうと絶対に僕のことは見ないでほしい」
これに関しては頷いてもらうしかない。
僕のことを神薙さんがまじまじと見たら……最悪の場合、廃人になってしまうかもしれない。
まぁ、僕の出力的にそこまではいくはずがないけど、念のため。
いい影響は確実に与えないだろうし……信仰心とかの面で非常に面倒なことになりそうだ。
「その内容については教えてくれたりは……?」
「んっ?まぁ、神薙さんならいいけど……今ではちょっとないかな。どうせ話すならちゃんとしっかりとしたところで話したい。結構突拍子もない話だし」
「ふふん。じゃあ、あとで聞かせてもらうね?忘れたとかはちょっと許さないよ?」
「うん。あとでね」
僕は神薙さんの言葉に頷きながらどんどんと進んでいく。
「そろそろか」
そんな中で、だんだんと子供たちが問われていた地下牢へと続く階段に近づいてくる。
「そう、だね……今度はあの黒い点とかに飲まれないようにしないとね」
「うん。そうだね」
僕は神薙さんの言葉に頷きつつ、先を進んでいく。
もう、正直に言ってあれに引っかかることはないと思うが。
さすがに初見でもない、二度目の攻撃に引っかかることはない。
一度、吸い込まれる中で技の所以をなんとなくではあるけど把握することができたからね。
「「……」」
あの階段が近づいてくるにつれ、僕たちの口数が減って緊張感が高まっていく。
「……ここだ」
そして、僕たちはとうとうあの階段の方へとたどり着く。
その瞬間だった。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああっ!」
「「……っ!?」
この階段の方から、最年長の少女であるアルファの甲高い、苦悶に満ちた悲鳴が聞こえてくる。
「行くよっ!」
「うん……っ!」
「きゅーい」
それを受け、僕たちは慌てて階段を下りていくのだった。
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