収拾

 カオス。

 その言葉に以上に今の状況を表すのに的確な評価はないだろう。

 僕と垣根はコメント欄の視聴者と共に男の娘と百合についての議論を深め、琴葉は鼻血を出しながらその場でにやけ続けている。

 そして、神薙さんは僕の方から視線を外すことなく見つめ続けている。

 これが今からダンジョン探索するメンバーだとはとてもじゃないが思えない。


「ほら!落ち着け!」


 そんな中で。

 このカオスを収めるために生徒会長が声を張り上げる。

 事務所に加入する前には生徒会長が一番非常識のヤバいやつだと思っていたのだけど、実は彼女こそが一番の常識人なのかもしれない。

 ラブスタの常識人枠は僕か生徒会長だろうね。


「これからダンジョンに潜る面々とは思えない動揺をあらわにするな。少しは落ち着け」


「……落ち着く?」


「落ち着くの意味がわからないチンパンジーにはなるなよ?わかるだろうに……そんなこと今さら言わせるな」


 垣根に対して、生徒会長は深々とため息を吐きながらずっと鼻血を出している琴葉の方にも視線を向ける。


「お前もいつまでそうしているのだ?」


「ふぇ?」


「ふぇじゃないわっ!」


「……ショタのぱんつぅ」


「私はなんでこんなやつを事務所に入れたのだ?個性的な方が受けると思っていたのだが、個性的すぎるのも失敗だったか……統率がとれぬ」


「うへぇぇぇぇえ」


「えぇい!気持ち悪い笑みを浮かべるなっ!」


「いった!?」


「とりあえず失った血を魔力で治しておけ!」


「……( ゚д゚)ハッ!ショタのよだれ!」


「バカかっ!この程度で使うなっ!自分の魔力で治すのだよぉ!」


「……ロリの、よだれ?」


「お前も何を言っているのだ!乗るな!こっちの馬鹿に!」


 生徒会長は垣根と琴葉の二人に対して、頭を抱えながら統率をとろうと奮起する。


「……大変そうだねぇー」


 そんな彼女を眺めながら僕は何とものんきな声を上げる。

 

「この惨状を引き起こした元凶である蓮夜くんが言えることではないんじゃないかなぁ?」


 それに対して、神薙さんのほうが反応してくる。


「いや、元凶は僕じゃなくない?悪いのはどちらかというと女装させた神薙さんの方だと思うのだけど」


「いきなりパンツを見せるのはないじゃないかな?ちょっと私もびっくりしちゃったよ?当然すぎて、するかも?とは思ったけどさ。位置的にカメラには映っていなかったと思うけど、映っていたらチャンネルごとさすがにBANじゃないかな?かなり規制は緩くなっているとはいえ、いまだにはエロへの規制はあるから」


「……ごめん」


 どうしよう、論破されてしまった。

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