連絡
「ふぃー」
自分の配信を終えてまずはイキシアに帰ってもらって。
その後、モロレンの方で思った以上も反響のあった宗教関連の話に対して、詳細を開示し終えてから川から組んできたお水を僕が飲んでいる。
「んっ?」
そのタイミングだった。
一度はテーブルの上に置いたスマホが鳴り響いたのは。
「えっと」
僕は何気なくスマホを取り、それを操作する……これは、誰かからより電話が来たのかな?あっているよな。
「はい、もしもし」
「もしもし、聞こえておりますでしょうか?」
「はい、聞こえてますよ」
「ご無沙汰しております。こちら、ダンジョン庁の高畑にございます」
「あー、はい。高畑近衛さんですね」
自分へと連絡をかけてきたのは高畑近衛さんであった。
「何の用でしょうか?」
「単刀直入に申し上げますと、我々政府がお支払いした謝礼金についてです」
僕の疑問に対する高畑近衛さんの答えがこれであった。
「……自分の貧乏エピソードから、ですか?」
それを受け、僕はすぐにピンと来た。
「そうなります……申し訳ありません。実は我々の方で赤城様の現状が把握出来ておらず」
「……なるほどぉ」
なんとなくだけど話が読めてきたよ。
僕が問題なく過ごせていると思い、お金なんていらないよね?って勝手に早合点して放置していたことに自分の配信で気づき、慌ててこちらへと連絡をしてきたということだろう。
多分合っていると思う
「別にいいですよ。そんなお金は」
わざわざ電話までしてくれたのはありがたいことではあるが……別に個人的に政府からお金は求めていなかった。
「政府のお金ということは国民の皆さんからの税金になるわけでしょう?」
「……そういうことになりますね」
僕の言葉に高畑近衛さんは頷く。
「でしたら、要らないですよ。自分は常に人々の側に立つ神主の一族が倅ですから。皆さんが汗水たらして稼いだお金から収めた税金をもらうわけにはいきません。自分に払う分のお金があるのでしたら子育て支援にでも回してもらうと嬉しいです。以前の自分の行いに関しても基本的には善意によるものですので」
神主としてのプライドとして、税金の一部を貰うことなんて出来るわけがない。
僕たちは人の為にいるというのに、その肝心の人から巻き上げるなんて許されるわけがない。
「わかりました……その寛大な御心に感謝致します」
僕の言葉に高畑近衛さんが頷いてくれる。
「あぁ、税金は駄目だから……という理由で自腹を切ったりする必要ないですよ?」
それでも、僕は何となく何も終わりにしなそうかも?という勘で一応、高畑近衛さんの方にも釘を刺しておく。
「……よろしいので?」
……しておいて良かった。
「はい。別にお金を求めているわけじゃないですから。本当に最低限生活できるのであれば十分です」
神薙さんは月収一億稼いでいるらしいが、僕としてはそこまでのお金もいらない。
今日を過ごせるだけのお金があればそれで十分である。
草を食べる生活から脱却さえ出来ればそれだけで満足出来る。
「あぁ……ただ、収入が入ってくるまでどうやら一か月くらいはかかりそうなのだよね。一応、もうすでに収益化の条件はクリアしているのだけど」
そんなことを思う僕は高畑近衛さんの方へと一応要求を通しておく。
「……ありがとうございます。それでは明日より毎日些細なお食事を届けさせてもらいます」
「うん。お願い……そんないっぱいはいらないし、食材と料理人を派遣するなんていう大掛かりなことはいらないからね?」
「承知いたしました。簡単に食べ始められるようなプレートでお出しさせていただきます。電子レンジなどはありますでしょうか?」
「自分の魔物に電子レンジの代わりをしてもらうので、冷食の方でお願いします」
翻訳の力のおかげで僕は魔物へと自分の要求を通す術を学んだ。
これによって細かな要求を行うことが可能となり、様々な特性を持つ魔物たちに家電の代わりをしてもらえたりできるようになっているのだ……まぁ、神様を怖がってこちらの方に出てくれない魔物たちの方が多いけど。
「なっ、るほど。そういうことでしたか。それでは冷食の方を送らせていただきます」
「ありがとうございます。今回の件についてはそちらが負い目に感じる必要性もありませんのでご安心ください。政府の方は過去より続く不文律を守っていただけたわけですから。それに、自分の状態を知れなくて当然の状態でしたので」
「本当に重ね重ねありがとうございます。何ともう申し上げて良いのやら」
僕の言葉を受け、高畑近衛さんがお礼の言葉を口にすら。
「素直に『また』の一言で良いですよ。それではまた何か人の為に出来ることがあれば教えてください。神主の一人として自分の力を存分に使うつもりですので」
「ありがとうございます……感謝しきれてもしきれません。貴方の存在は日本の誇りです」
「日本列島に根付きし大国であり、国体を一度も犯されることなく常に続けてきた日本という存在そのものがこの地を長く見守る自分たちの一族にとっての誇りですよ。これからも日本をよろしくお願いします。それでは失礼いたします」
「もちろんにございます。今後とも、我が国を発展させて参る所存です。それでは失礼します」
自分の言葉に対して、高畑近衛さんが返答して言葉を切ったのを確認した僕は彼との電話を切るのであった。
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