第四章 狂愛

読心

「ん?配信出来るまでに回復したんだ。良かった良かった」


 エルに表示してもらったニュースサイトには神薙さんが配信活動を再開したという一報が表示されている。

 神薙さんが回復してくれているようなら何よりである。


「きゅーいっ!」


 僕がスマホのニュースを眺めていると、多くの魔物たちと共に作業をしていたイキシアが鳴き声を一つ上げる。


「あっ、終わった?」


 それを受け、僕は視線を持ち上げてイキシアたちの方に向ける。

 そこには巨大な池並びに様々なところに伸びている川が出来上がっている。


「ありがとぉ」


 僕はイキシアたち頑張ってくれた魔物を撫でながら池の前に立つ。


「よぉーし。ようやく人魚たちを解放できる」


 そこで、僕が行うのはこれまでずっと魔物のボックスで肥やしになっていた人魚たちの解放である。

 水がある場所でなければ生活できない人魚たち。

 そんな彼女たちはこれまで、うちのダンジョンに大きな池も川も海もなかったせいで解放することが出来なかったのだ。


「ほら、行ってこい」


 そんな中でようやく池と川が出来たことによって解放することができるようになった人魚たちを僕は次々と解放していく。

 すべてをボックスの中から出し終えて、


「おぉ……見た目は一番人間っぽいな」


 僕は池の中で嬉しそうな鳴き声を上げている人魚たちを見ながらその見た目に関する感想を口にする。

 下半身は明らかに人ではないが、それでも上半身はまんま人である。うちのダンジョンにいる魔物たちの中では一番、人間らしいのではないだろうか。

 交尾の仕方が僕の全身を膣に突っ込むという驚愕の方法である巨人たちはその見た目が大きさ以外は人に近くても人とは認めたくないし。


「……ほとんど人間と変わらない人魚の口から獣のような鳴き声が出ていることも中々」


 明らかに人でしかない顔から、明らかに人ではない獣のような鳴き声が上げられているのもいいよねっ!


「っとと」


 そんなことを僅かながらに考えた僕はすぐに思考を切りかえてディスプレイを表示させる。


「よし。魔物の解放数突破。レベルアップ出来るぅー」


 僕はもう慣れた手付きでダンジョンレベルを上昇させる。


「今回のレベルアップ報酬は何だろうなぁ」


 そして、そのまま今回のレベルアップ報酬を確認していく。


「……読心?」


 今回、追加された機能は読心という能力であった。

 他人の心でも読めるようになるのか?


「ええっと……何々」


 自分が所有している魔物の心の内を看破することが可能です。

 魔物たちは自分の心が読まれていることには絶対に気付けません……って、おぉ!?これはかなりの神機能じゃないか?

 読心の効果説明を読む僕は内心で喝采を上げる。

 これはつまり、鳴き声だけでその実。何となく考えていることもわかるけど、実際は何を考えているのかわからなかった魔物たちの心がわかるのだろう?


「……」

 

 僕はいつものように自分の横に立ち、澄ました顔でジッとこちらを見つめているイキシア方へと視線をちらりと向ける。

 勝手に、相手の心を読むのはかなりひどいけど……こういう、能力が生えてきたのだし、これが必要になると言うダンジョンからのお達しなんだよね。

 うん、だから使ってもいいでしょう。


「……」


 読心起動。

 対象はイキシアっと。


『(主様の横顔可愛いニャ。(^ω^)ペロペロしたいニャ。今日はどんなプレイで楽しもうかニャ。久しぶりに主様に舐めてもらったりするのも良いニャー。(検閲済み)、(検閲済み)ニャー。絶対気持ちいいニャ(*゚∀゚)=3ハフンハフン)』


 イキシアに読心を発動させると共に自分の頭の中に流れ込んでくる彼女の考え。


「……おっと?」


 そのあまりにもピンク色に染まっているイキシアの心のうちに僕は困惑を露わにするのだった。

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