自宅の庭にあるダンジョンで魔物を育てているモブ高校生の僕、クラスの美少女配信者を新種の魔物を引き連れて助けた結果大バズりしてしまう

リヒト

第一章 ダンジョンマスター

プロローグ

 自分で言うのもなんだけど、僕はそこそこ顔が良いと思う。

 パッチリお目目に二重、涙袋を生まれながらに完備。顔立ちも整っているし、鼻の形だって悪くないと思う。

 それでも、僕には目を引くような特徴的な顔のパーツもないし、中肉中背。

 そして、何よりも問題なのはこの引っ込み思案な自分の性格だろう。コミュ力も人当たりの良さも僕は持ち合わせていなかった。

 

「あー、彼女ほしー」


 なので、僕は残念ながら異性の女の子が常にいる常時合コン状態とも言える高校という華の舞台に生きて居ながら彼女いない歴=年齢の陰キャであった。

 悲しき高校生である。


「わかる……わかるわぁー、俺も一端の高校生として恋愛して彼女と青春を送りてぇーなぁ」


 僕が机に項垂れながら告げた言葉に対して、自分の友人である森山和人も頷いて同意してくる。

 彼も自分の同士である陰キャ高校生……まぁ、身長が180cm近いカス野郎ではあるけど。

 高身長になど、僕が人権を与えない。

 勝手にデカくなりやがって……チビしかいないご先祖様に申し訳ないとは思わないのか?


「……もういっそお前で?」


 彼女が欲しいと告げる僕の元へと更に新しい声が一つ向けられる。


「ふざけるな、殺すぞ」


 その主とは僕の方へと怪しげな視線を送ってくる菊池秋斗。

 和人と同じ僕と仲良くしている友達の一人であり、同じ陰キャ高校生。

 ちなみに身長は僕よりもちょっと高いくらいのデブ……多分だけど、こいつが僕や和人を抜け駆けして彼女を作ることはないだろう。

 へへへ、お前は仲間だよ。

 一緒に抜け駆けする可能性のある和人を押さえつけていような?


「へへへ、お前……女みたいな体をしているな」


 そんな失礼なことを考えている僕へと秋斗はテンプレとも言える言葉を発しながら下衆たる視線を送り続けている」


「やめろぉ!僕は男だぁ!」


 僕は下衆たる笑みを浮かべる秋斗を前に自分の体を庇いながら悲鳴を上げる。


「あぁ……どうやったら俺たちに彼女が出来るんだろう」


「神をもわからぬ難題だな」


「……俺は、まず痩せないとな。いや、デブ専を見つける方が、話題になっているデブなオタクが恋人を掴むアプリがあるらしいし、それを使えばあるいは?」


「やめときな?無理だから」


 僕はスマホを取り出している秋斗をやんわりと止める。


「にしても、玲香さんは今日も可愛いなぁ」


 教室の端っこにいる僕たちとは違って教室の中心に立っている美少女、神薙玲香へと視線を送りながら和人が声を上げる。


「そうだね……彼女は今、登録者が百万人を超えている大人気インフルエンサーだものな。僕たちとは格が違うよ……それと、神薙さんのことを下の名前で呼ぶの辞めな?どうせ本人を前にしたら呼ばないのだから」


「う、うるさい……これくらいなら俺でも許されるだろ!」


「お、俺……少し前にあの玲香から消しゴムを拾ってもらった」


「「はぁっ!?」」


 クラスの中心にいる神薙さんとは程遠い。

 クラスの端っこにいるモブ高校生、それが僕……赤城蓮夜の立ち位置であった。


 ■■■■■


 特に何の特徴もないクソ陰キャで多くの人の記憶に残ることはないモブ高校生である僕は何もなかった学校から帰り、


「ふんふんふーん」


 何の特徴もないクソ陰キャ。

 それが自他認める僕のステータスではあるが、それは少し前に過去の段階になっている。

 今の僕にはとある一つの強烈な個性が存在している。


「さぁーて、今日も楽しんでいこうか」


 それが何か。

 簡単である。僕の庭にはダンジョンへと入るための入り口があるのだ……え?他人だより、自分の個性じゃない?うるさい、周りの環境も個性だ。


「今日も来たよー、みんな!」


 心の中で一人、虚しくセルフツッコミをしながらダンジョンへと足を踏み入れた僕を出迎えるのは大量の魔物たちである。


「~~~!!!」


「待つ、待つ、待つ!」


「すきぃ」


 ダンジョンに存在する魔物は一般的に、人間への殺意を剥きだしにしている強力な魔物たちばかりである。

 だが、僕を出迎えた魔物たちはこちらへの好感度がマックスな人型の魔物たち。

 人ではない、それでも二本足で立つ可愛い人外の魔物。

 そんな女の子になった航空自衛隊御前崎分屯基地の公式キャラクターであるおまねこのような魔物たちである。


「よーしよし!」


 好感度がフルマックスな可愛い、可愛い魔物たちは僕の元へと一目散に寄ってきて随分と初々しい愛情表現を───。


「って、あれ?」


 自分へと駆け寄ってきた魔物たちは実に手慣れた動きで僕のことを協力して持ち上げる。


「あっ、ちょ、ちょっと!?」


「「「交尾、交尾、交尾」」」


 そして、そのまま交尾という短い単語を連発しながら自分が能力で立てた建物の方へと僕を連れたって魔物たちが向かっていく。


「みんな、待って!?待って!?僕はとりあえず先にダンジョンの様子を確認したいのだ───んっ、あぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!!」


 僕がこうして数多の魔物たちと暮らすことになった理由。

 そのきっかけは今から三か月ほど前にまでさかのぼることになる。

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