改訂増補版によせて(2023)

 ご愛読と応援にて、おかげさまで『黒獅子物語』も完結し『薔薇の王子、幸運の翼』も増刷できました。ありがとうございます。完結全七巻の超大作『黒獅子物語』と一冊読切シリーズ『探偵王子』の二本立てでのご紹介を続けてまいりましたが、一冊で読める王道ファンタジーもあるときっと初見の方は嬉しいだろうな、と思っての再版です。

 初版の刊行から三年後の今読み返すと、グレイズとセルゲイのバックボーンや、彼らがどんな人間で、どのようにして友情を育んだのかが曖昧で、まるままの再版はだめだな、となりました。改訂どころかエピソードの深堀があって五〇頁以上の増補がなされ、このような改訂増補版と相成りました。初めての方、あるいは前回のトレーシングペーパー箔押という特殊装丁版をお持ちの方にもお楽しみいただけたかと存じます。表紙もかきおろしましたものね。

 今回の増補版にあたり、特に掴めなかったのはグレイズでした。彼の特殊な生育環境と、交友経験のなさについては正直わからなくて。これまでずっと捉えきれずにいたのもあって、たくさん勉強しました。……という姿勢がグレイズそのものの頭でっかちさを演出できるのかな、と考えてみると、生来の頑固さや、出張るときはやれる部分などが自然に出てきたように思います。セルゲイはいいかな。そこら辺にいるチャラい顔と体のいいジャリボーイです。

 この人好きのする勇者、セルゲイ・アルバトロスの若き日の物語は『幸運の翼』シリーズとして刊行出来たらいいなと考えていたりもします。毎回はらはらの冒険と、素敵なヒロインが登場するような、ファンタジー版『寅さん』のようなイメージでぼんやり考えています。

 叶うとすれば数年越しかも。ご感想などいただけますと、待つのが五年から二年ぐらいに短縮されるかもしれません。よかったらお聞かせください。

 あと、それからとっても大事なことを忘れていました!

 今回のカラー口絵は、私のコミティアデビューイベントである『北海道COMITIA19』のフライヤー用に依頼され書き下ろした一枚です。裏に『彷徨うイーンガスの歌』つき。

 私にご期待頂いたものとはなんだろう、と考えたときに、ド直球の王道ファンタジーだな、と思い至りました。なので、ドラゴンとプリンセスの旅立ちを描こうと、モチーフはすぐに決まりました。キャラクターはそう、エウリッグとマルティータです。

 このイラストでカバーを、とも一瞬考えましたが、こちらはイベント専用の看板になりましたからカバー絵はかきおろしました。しおりも新しいです。

 本書が、そしてこのイラストが私の名刺、自己紹介の一冊になるよう、願ってやみません。

 まだ本編を読んでないちょっと失礼なあなたは、さっさと九頁に行くのです。

 そして頭からここまで隅々まで目を通して物語に浸ってくださったあなたへ、ありがとうございます。また一緒に旅に出ましょうね。今度は音楽を多めにしたいです。だってセルゲイってば、モテたくてリュート歌曲やってるんですから。

二〇二三年十二月 黒井ここあ

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