31.遠くに行ってしまう先輩へ
飲み会は続き、私はお酒を飲みつつ、こわごわと口を開けた。
「あの、その……私は至らない点が多かったと思います」
先輩と上司はううんと頭を振った。
でも、それは、どうとっても私にはお世辞にしか聞こえなかった。
先輩はずっと残業をしていて、職場の整理も常にしていて、業務内容も詳しくて、私と二つしか違わないのに、きちんと上司との距離感や気遣い、話す言葉も大人だった。時折、出てくる京都人らしい裏のひねくれは、子どもっぽくて、それもまた楽しんでた気がする。
特に仕事は先輩がいないと成り立たないものばかりでキツかったと思う。
「先輩に頼ってばかりで申し訳なさしかないです。これからは、先輩に教えてもらったこと、きちんと活かしていきたいです」
どうしてこういうときって、ありきたりな言葉しか言えないんだろう。
そして、準備をしていた眼鏡拭きを渡した。
「ほら、先輩。ずっとティッシュで眼鏡を拭いてたでしょ?」
感謝の声とともに非常勤職員さんが、
「よくできた後輩だねぇ」
と、感心の声。
ええ、そうありたいものです。
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