第58話 島々探索

 落下防止作業をざっと終わらせて仮拠点に戻ると夕飯が出来上がっていた。


「お、チャーハンか。それも海鮮」

「はい、実は二人でこっそり獲っておいたんです」

「ちゃんと食べられる貝ですからねー」

「信用してるよ」


 一度食あたりになった伊那が言うと説得力が違う。


「海老やイカがあればよかったんですけど」

「貝だけでも十分だよ。ありがとう、二人とも」

「えへへー」


 落下防止策や橋を作ってもまだ余っている木材に魔法を掛けてレンゲを作る。

 普通のスプーンでもよかったけど折角だし、このほうが気分が乗っていい。


「いただきます」


 掬い上げたチャーハンに貝を乗せて口へと運ぶ。


「お、美味いな」

「やった!」

「よかった……」


 思っていたよりもずっとチャーハンの味がする。


「グリフォンの翼の骨で鶏ガラをとったんです」

「とっても大変だったんですよ!」

「マジか。手間が掛かってるな、美味いわけだ」


 鶏ガラで米を炊いたのか。道理で。

 臭み消しにはネギかなにかを使ったか。

 エルフの里の畑様様だ。


「鶏ガラスープもありますよ。野菜たっぷりです」

「いいね、美味そう」


 二人が用意してくれた夕飯に大満足して今日という日を終える。

 明日は別の島にも行ってみよう。


§


 この群島エリアには実に様々な島が点在している。

 仮拠点を置いている中心島から周囲に満遍なく。遠すぎたり危険過ぎたりして容易にはたどり着けない島を覗いても、その数は大小を含めると数えるのも億劫になるくらいだ。

 その一つ一つを見ていられないので遠目からある程度、島の様子が窺えるものだけに絞り、数日を掛けて調査を進めた。


「わー! 見て見て! 温泉! 温泉が湧いてますよ!」

「天然の露天風呂か。いいな、風通しもいいし。こりゃ拠点の風呂もお役御免だな」

「私は拠点のお風呂も好きですけどね」

「あ、雲雀ちゃんが好感度稼ぎしてるー!」

「伊那!」

「わー!」


 天然温泉が湧く温泉の島。ちょっと熱め。


「あの島……ワイバーンだらけ」

「幸いなことにここから遠い。こっちにくることはないだろ、たぶん」

「おー……蝙蝠の群れみたい」


 ワイバーンが集う竜の島。危険度、高。


「あ! あの島ハートの形してる! 雲雀ちゃん雲雀ちゃん! 一緒に!」

「そうね、折角だし」

「よし、じゃあ俺が撮ろう」


 ハートの形をしたハートの島。映えスポット。


「凄い……一面の花畑」

「私、こういうところに一度来て見たかったー!」

「花のいい香りがして気分が落ち着くな」


 色取り取りが咲き誇る花の島。映えスポットその二。


「なに……この、なに?」

「顔に見える、岩?」

「なんでこの島、この岩だけがぽつんとあるんだ?」


 顔面岩が鎮座する謎の島。映えスポットその三?

 そして色んな島を巡って一番の収穫は、当初に中央島から見えていた山の島だった。

 他よりも一際大きいこの島には山脈が連なり、ちょっとした大地になっている。

 そこに踏み込んだ俺たちを出迎えてくれたのは、数多くのハリネズミだった。


「おいおい、アイアンニードルがこんなに」

「アイアンニードルってなーに? 雲雀ちゃん」

「伊那……」


 ため息を付きつつ、雲雀は伊那に解説した。


「見ての通りよ、鉄の針を持った鼠。アイアンニードルは地中に穴を掘って鉄鉱石を食べるの」

「おー、じゃあその鉄分で針を生やしてるんだ」

「その通り。でも、たぶん重要なのはそこじゃなくて」

「て?」

「生え替わるのよ、錆び付く前に」

「つまり、この辺には鉄の針がたくさん落ちてるってことだ」


 まだ錆びていないもの、そうでなくても錆を落とせば使える鉄が山ほどある。

 アイアンニードルは比較的温厚な魔物だし、脅威を感じると丸くなって動かない。こちらから触れにいかない限りは安全だ。


「拾い集めるぞ、これからは鉄の時代だ」


 蝶番、ネジ、釘、留め具、補強具、物を造るのが楽になる。

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