第55話 群島エリア

 砂漠エリア。


「昼あつーい! 夜さむーい!」


 火山エリア。


「ずっと噴火してる!」


 雨林エリア。


「大洪水!」


 荒野エリア。


「なんにもない!」


 温泉エリア。


「硫化水素の溜まり場!」


 数日を掛けて色々なエリアを巡った。

 明らかに人間が住むに適していない環境にも、一応は足を伸ばして否と判断を付ける。

 そうしてここでもないあそこでもないと意見を言い合い、俺たちは群島エリアに足を運んでいた。


「わぁ! すっごーい! 空の上にいるみたい!」

「底なしの虚空に浮かぶ空中群島……教科書に書いてあった通りだわ」


 島から島へ。

 瓦礫のような岩石がそれなりに密集している場所を軽油してこの群島エリアの中心部を目指す。


「ここから落ちたらどうなっちゃうんだろ? どこに繋がってるのかな?」

「それを知る前に落下の恐怖で失神するだろうな」

「こわーい」

「落ちそうになったら私が助けてあげるから大丈夫」

「えへへ、やったー!」


 雲雀の風魔法なら伊那が落ちても抱えて陸地に復帰できるか。その時が来ないに越したことはないけど。

 俺が落ちた時は自力でなんとかしよう。


「あ! 見て見て! あそこの島に小っちゃい森がある!」

「あそこには海があるわね。あっちには山かしら」

「平原も見えるな。いろんなエリアが島として点在してるんだ。ここなら物資調達も簡単だし、あっちの集団もここを拠点には選ばないだろうけど」


 森には果実と魔物が、海には魚介類、たしか湖もあったはず。

 ここだけで生きていくために必要なものは揃う。

 揃うが。

 ちらりと底なしの奈落に眼をやる。


「落ちたらシャレになりませんね」

「条件はぴったりなのにー」

「うーん。ここに拠点を構えるとして、だ」


 地盤はしっかりとしている。飛んだり跳ねたりしても揺れたりしないし、沈み込みもしない。群島と呼ばれるだけあって大小様々な足場が転々としているけど、その間隔は決して遠くない。

 この群島の中心に拠点を作れば、ほかの島へのアクセスは意外と簡単かも。

 とはいえ、落下の危険性がある以上は、それに対する対策を講じないと。

 なんてことを考えていると、群島エリアの中心に位置する大きな島に辿り着く。


「よし。ここに仮拠点を作って様子見しよう。危なかったらやっぱり止めだ」

「はーい!」

「落下防止用の柵と、ほかの島へ渡るための橋があれば……」

「だな。まずは寝床。それから探索だ」


 樹海エリアの本拠点から持ち込んだ木材を異空間から取り出して、簡易的な小屋を作成。コンパクトな仕上がりだけど、きちんと部屋は三つある。露天風呂はなし。

 ここの住み心地がよければ一度解体して新しく作り直そう。


「これでよし。あとは道を整備しながらまずは森の島のほうに言ってみようか」

「あっちですね。落下に注意しないと」

「落ちたら助けてね? 雲雀ちゃん」

「怖いこと言わないで。もちろん助けるけど、落ちない努力をするのよ」

「もちろん! 島の橋のほうに行ったら気を付ければいいんでしょ? 楽勝!」

「注意するのは島の淵だけじゃないぞ。どこに穴が空いてるとも知れないからな。見逃して足を踏み外したら……」

「……私、雲雀ちゃんと手を繋いでる!」


 ぎゅっとしがみつくようにして伊那は雲雀と腕を絡めた。

 雲雀は動きずらそうにしてたけど、しようがないな、と言った風な顔をして受け入れている。まぁ、落下を考えれば悪くないけど、魔物が現れたらどうするつもりなんだ?

 まぁ、慣れるまでは俺がフォローすればいいか。


「おっと、ここから注意な」


 虎鶫で茂みを切り開いて進むことしばらく、いま居る島の淵が見えて来た。

 その先には比較的小さめな、けど人が三人乗るには十分過ぎるくらいの小島が点在し、その更に向こう側に目指している森の島があった。

 この小島の群れを渡っていけば目的地に付ける。

 島と島を繋ぐ橋を作ろう。

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