第27話 心理描写の書き方について②【R15】
※一応、R15です。ご注意ください。
**(本文から一部抜粋)**
「なんだ、まだ子供じゃない。あんたに、何ができるって言うのよ」
ザベルの挑戦的な態度が、ヘトゥムの中にあった僅かな迷いを払拭させた。彼の焦げ茶色の瞳が、ぎらりと光る。
「子供かどうか、試してみてから言うがいい」
**(本文から一部抜粋)**
「第3話 凌辱と再婚(※閲覧注意。)」
(https://kakuyomu.jp/works/822139840393758467/episodes/822139840395034777)
えー……まず、ヘトゥム(ザベルの夫を殺した男の息子12歳)がザベルに向かって放つ台詞ですね。この先に起こるであろう事象を想像してしまい、ちょっと「うっ」と気持ち悪くなりました。
でも、それはもしかしたら私が、この先に待っている出来事を既に知っている作者だからこそ感じただけなのかも?
次に、問題の凌辱シーンです。
**(本文から一部抜粋)**
ヘトゥムの身体が、ザベルの上へのしかかる。あっという間に、寝台の上へ組み敷かれてしまう。ザベルは、まだ誰にも触れられたことがない場所を晒されて、無理やり蹂躙された。
ザベルには、最初何が起きているのかすら分からなかった。ただ、身体を熱い鉄の杭で貫かれたような痛みに、気を失った。
目を覚ますと、全てが終わった後だった。
**(本文から一部抜粋)**
「鉄の杭」という表現も、ギリギリの表現じゃないかなと……かなり迷ったのですけども、、今のところ運営から警告連絡はありません(笑)。
おそらく、ここが一番あっさりしていると思われる所以になっているのかなーと。
「まだ誰にも触れられたことがない場所」とか「鉄の杭」とか、抽象的な表現を使うことで、生々しい描写を敢えて避けています。
ここを具体的な描写に変えてしまうと、それこそ垢BANをくらってしまうと思うので、さすがにそれはしません💦
でもたぶん、一部の読者が感じている物足りなさは、具体的な描写不足のほうではなくて、これを受けているザベルの心情のほうなんじゃないかな、と思いました。
私、ここでザベルの気持ちを書いていないんです。
だって、凌辱されている女性の気持ちなんて……事実を想像するだけでも辛いのに、そんな生々しい描写を入れたら、へたしたらトラウマを与えかねないだろう、と判断したわけです。
私は、読者に辛い思いをしてまでこれを読んで欲しいのではないのです。
こういう女性が本当にいて、歴史の本では、たった一文しかない、日本の歴史になんか載っていないような史実だけど、それでも血の通った生身の人間として生きていて、傷ついていた、その事実を知ってほしかっただけなのです。
一見すると、私が手を抜いて「気を失わせた」ようにも受け取れますけどね💦
「ザベルには、最初何が起きているのかすら分からなかった。」
ここは、ザベルに性知識がない生娘(処女)であることを、彼女がまだ子供で、幼い純真な心根を持っていることを想像してほしかった。
ザベルは、12歳のヘトゥムですら知っている行為を、何をしているのか理解できなかったのです。
「痛みに、気を失った。」
ここは、気を失うほどの痛み、現実を手放して夢へ逃避したくなるほどのショックを受けたことを想像してほしかった。
「目を覚ますと、全てが終わった後だった。」
簡単に書いていますが、「全てが終わった」ということは、本当の意味で「全てが終わった」ということ。ザベルの中にあった子供らしさとか、処女とか、愛する人とこれからゆっくり知っていく筈だった大事な行為、営み、憧れ、夢……そういう綺麗で穢れのない真っ白なもの全てをザベルが失ったという意味です。
で、たぶんここで私が説明した内容をそのまま書けば、もう少し伝わったのではないかな、と思いました。
私の中では、上の三行だけでザベルの気持ちが想像できてしまって、それ以上を書くのが辛かった……というのもあります。文字数制限もあるしね。
ここがまず、私が心理描写を無意識に省いてしまっていた部分です。
簡素な文章だからこそ、胸に訴えることが出来るだろう、という思惑もありました。
でももしかしたら、それも人によって受ける印象が違うかもしれませんよね。
この短い文章から、そこまで想像しねーよ!……と、ツッコまれる方もいるかもしれません。
そもそも「処女を失う」という行為がどういうことか、処女である(あった)女性なら、いくらか想像はできても、男性には想像できないですよね。
男性なら「童貞を失う」という同義語があります。
けど、男性が「童貞を失う」というのは、逆に何かを得る(勲章のようなもの)という行為であるのに対して、女性が「処女を失う」というのは、大事で貴重な宝物を失うような価値観の違いがありますよね。
人によっては(年齢によっては)、「処女」早く捨てたい、みたいな感覚を持たれる場合にも使われますが……ここでは、まだ14歳の少女ですので。
昔の王家の人間なら早くないだろう、と思われるかもしれませんけど、そこは現代に置き換えて想像してほしい。周りをとりまく環境が違うだけで、何が違うの?と私は思います。
話が少し逸れましたが、やはりここは、男性が読んでも伝わるように、14歳の少女が処女を失うということがどういうことか、もう少しザベルの心理描写を書いて伝えるべきだったな、と反省したわけです。
そして、次に問題だなと私が感じているのが、ザベルの心が壊れて行く過程についてです。
**(本文から一部抜粋)**
以来、ヘトゥムは、ザベルの部屋を訪れるようになった。その度に、ザベルの身体は、ヘトゥムによって凌辱された。
誰にも知られないよう、声の届く範囲からは人払いをしてあった。ザベルは、ただ痛みと屈辱に、ひとりで耐えねばならなかった。
舌を噛み切って自決できぬよう、口には猿ぐつわを噛ませられた。
身も心も削られ、次第に生きる気力すら失われていき、ザベルは、どんどん食が細くなっていった。
**(本文から一部抜粋)**
ここも、敢えて事象で説明しています。ザベルの内情を、読者の想像に任せてしまっているんですよね。
まず「凌辱」というワードがキツイです。重いです。ヘヴィです(しつこい)。
ここに重たい心情描写まで書けば、更に重い印象を与えてしまうでしょう。
だから、敢えて淡々とした事象だけで説明するにとどめています。
これは、「凌辱」に対する免疫が薄い人への考慮も含まれています。
先にも書きましたが、私は、読者に痛い思いをさせたいわけではないんです。
そしてそれは、たぶん成功している。
だから、気持ちよく(?)最後まで読み切って読後感がさわやか(?)なまま、ザベルという存在を印象づけることが出来たと考えています。
「その度に、ザベルの身体は、ヘトゥムによって凌辱された。」
ここは、ザベルが何度もヘトゥムによって身体を蹂躙されたこと、支配を受け続けたことを想像してほしかった。
「ひとりで耐えねばならなかった」
ここは、14歳のザベルが、凌辱を受けたことによる心的障害に対して、孤独で、誰のサポートもなく、一人で戦い立ち向かわなければいけなかったことを想像してほしかった。
「声の届く範囲からは人払いをしてあった」
「口には猿ぐつわを噛ませられた」
これらを書きながら私は、ザベルを追い詰めて行く鬼か犯人のような気持ちになりました。ごめん、ザベル……ひどい作者を許して……って感じです。
この時のザベルがどんな気持ちか? どんな気持ちか?
(本当に想像できんのか?wとちょっと思うけどww)
身体の自由を奪われて、心をズタズタに傷つけられて、魂のない抜け殻か人形のような……自分の身体が自分のものではなくなっていく感覚……っていえば、伝わりますかね?
本来であれば、愛しあう者同士が、互いの愛を確かめ合う神聖で尊い行為のはずが、ザベルには、それを幸せだと知る機会すら奪われたのです。おそらく、自分の身体が汚されていく感覚……汚物かなにか、得たいの知れない魔物になっていくような気持ちがしたことでしょう。
でもこれは、あくまで私が両親から正常な愛情を受けて育ち、性教育についても正しく(ロマンチシズムが過分に入っているかもしれませんが)学べて、愛のある行為を知っているからこそ感じる価値観なのだと思います。
その前提が崩れてしまえば、私の感じ取れるものが、ある人によっては一部しか感じ取れない、歪んで伝わってしまうことだってあり得るのだ、ということに気付かされました。
この作品に、狂気や憎悪、もっと醜悪な何かを足して書くことは可能です。
一万字超えてしまうので、短編では無理ですけど💦
でも、それは、本来私が本当にこの作品を通して伝えたかったことなのかな?と思うと、ちょっと違う気もする。
ザベルが悲劇の中でも生きようとした証のようなもの……気高い心のようなものを伝えたかったのではないかな、と。
考えて考えて……昨夜、この一文を追加しています。
**(本文から一部抜粋)**
舌を噛み切って自決できぬよう、口には猿ぐつわを噛ませられた。
(わたしじゃない……これは、わたしの身体じゃない……――)
身も心も削られ、次第に生きる気力すら失われていき、ザベルは、どんどん食が細くなっていった。
**(本文から一部抜粋)**
これが今の私の中で最大の譲歩でした。心が壊れる過程を伝えつつ、嫌悪感を抱かせないための最低ラインかな、と。
そう。私は、別にこの作品で読者に嫌悪感を抱かせたいわけではないのです。
だからこそ、そこは成功していると言っていいのでしょうね。
ちなみに、上の一文を追加したことで、ちょうど1万文字になってしまったため、これ以上の加筆は、どこかを削らなきゃいけなくなる。
それは面倒なので、しませんww
この後、ザベルは、自分がヘトゥムの子を妊娠していることに気付いて、自死しようとします。
**(本文から一部抜粋)**
「……死んでやる。死んでやるわっ」
ザベルは、侍女の手から果物ナイフを奪うと、それを自身の腹に向けて突き刺そうと振り上げた。
侍女が悲鳴をあげて、咄嗟にナイフの刃先を素手で掴んだ。侍女の手から流れ落ちる血痕が、白いシーツに赤いシミをつくる。それでもザベルの興奮はおさまらない。
「離してっ!」
「おやめください! おやめください! お身体にさわります……っ!」
侍女の悲鳴を聞きつけて、外で護衛をしていた兵士たちが入って来た。彼らは、一目見るなり状況を把握し、力づくでザベルの奇行を止めにかかった。
「死なせてっ! わたしを死なせてーーーっ!!!」
ナイフを取り上げられて、寝台に縛り付けられる。それでも、ザベルの悲痛な叫び声が、城内に響き渡った。
**(本文から一部抜粋)**
これも狂気が足りないのか~……という感覚なのですけど(私としては)、たぶん私が感じているものを読者も同じように感じていないからなのでしょうね。
お腹の子供は、まず大前提として何が何でも守らなきゃいけない尊い命である、という価値観があります。
しかも、自分の体内で発生して(存在しなかったものが)、自分の血肉を吸収しながら成長していくのです。我が身と同然なわけです。
ドラマとかで、妊婦さんが危険な状態になって、「母体を優先しますか? 赤子を優先しますか?」と医者が夫に尋ねるシーンって、ありますよね。
この答えは、もちろん人によるとは思いますが、基本は「赤子を優先してください」と答えるかと思います。それが母体である母の意志だからです。
つまりね、女性にとって(これは経産婦にならないと分からない感覚かも)、自分の体内に芽生えた命は、自分の命よりも優先して守らなければいけない、という本能が働くのです。ホルモンの影響です。生命のロジカルです(ロマンシチズムじゃねぇのかよw)。
であるにも関わらず、本来は自分の命よりも大事である赤子の命を殺そうと思うほどの狂気……生命の非ロジカル(自然界では不自然な事象と呼ばれる行為)……これを狂気と言わずして、何を狂気を言うんじゃい、という感覚です。私としては。
でも確かにこれは、経産婦でなければ分からない感覚なのかもしれないし、ましてや男性からすれば、自分の体内に別の命が宿っているなんて……想像もできないでしょうww
陣痛の痛みは、男性には耐えられない、と言われています。
それくらい、男女の価値観の差というのもあるのではないかな、と気づいたわけです(遅いわ!)。
つまり私の作品には、過分に私の独りよがりな価値観の上でしか成り立たない心理描写をしている、というわけなのです。
いや、ここマジで反省してるとこ!!
情景描写とか状況描写なんかでは、よくありますよね。作者本人の頭の中では、こういうイメージがあるけど、読者にそれが伝わっていないから、文脈から伝わらない、状況について齟齬が起きる。
それが私の場合、心理描写に齟齬が入ってしまっているな、と学んだわけです。
えらい!(自画自賛ww)
長くなりすぎたので、そろそろ終わりにしようと思いますが……ある方からご厚意で、うちのザベルを作品の中で紹介してくださった方がいらっしゃいまして(後ほど改めて御礼に伺います)ちょっとだけ言及させて頂きます。
>「現実では許されない行為ですが、敵意を持つ相手に無理矢理されて段々絆されるとか、超萌える設定です(ドン引きされるかもしれませんが……)」
(引用元)『迷える子羊の読書録』(田鶴さま)
⇒https://kakuyomu.jp/works/16818093085464641449/episodes/822139841401944989
えっと実は私も、そっち派です!!!(どーん)
いやわかる。めっちゃわかるわぁ~……と思ってしまって、つい使わせて頂きました。すみません💦
たぶんザベルの話を長編化したら、私はきっと、ヘトゥムとの歪んだ愛憎劇を書くと思いますww
うん。ノーマルな人と、カクヨム運営から目をつけられたくないので、表面上は、綺麗なこと言っておかないとね!
ここだけの話にしてくださいね!!
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