大福戻ってくれたね⁈

tamaちゃん

第1話 愛する大福の死


 主人公谷口健太は下町にある従業員がたった5人の零細企業の整備工場の息子だ。元々自動車や機械をいじる事が大好きな健太は、小さい頃から危険も顧みず工場の中を傍若無人に右往左往していた。


 だが、これには困り果てた父親。それこそ修理中の車の下に入り込んだり、ボンネットが空いていれば侵入したりと危険極まりない。


 あれは確か……3歳の頃、廃棄処分の車に潜り込み、あわやシュレッダーに掛けられそうになった事がある。


「フッフッフ……ワ~おもちろい。アッハッハ!」


「オイ!今の……健太の声じゃないか?この前はシュレダーで粉々になった車の破片の中に紛れ込み、顔中血だらけになった健太が出て来た。ココッこれは危険だ!どこに紛れているか分かったものではない」危機感を感じた社長によって作動中の機械が一斉に停止した。

 

 その声はどこからともなく聞こえて来た。よくよく見るとプレス機でペチャンコにした車の隙間に入ったらしい。すると今シュレッダー機に掛けられる寸前の車の中から、ひょこりと顔をのぞかせた。


「主任しっかりしてくれよ……跡取り息子がシュレッダーに掛けられたら大変な事だ」


 この様な事がしょっちゅう起こっていた。

 そこで…何とかこの様な危険を回避する方法は無いものか、考えた社長の発案で、工場の隣りに好奇心旺盛な健太の為に6畳ほどのミニ工場を建築してやった。幾らミニ工場といっても、作業が出来なくては話にならない。子供が入って発明が出来るほどの工場である


 すると今までの出来事が噓のように、ミニ工場に入り浸りとなった健太。こうして…工場に籠り発明に余念がない健太。


 まず最初に発明したのが4歳の時だ。まだ小さいので「菓子よ現れてくれマシン」を作った。


 それは…いらなくなった機械の部品で高い所に仕舞ってある大好きなお菓子をゲットするマシンだ。要は背が小さいので高い所にある菓子を、鉄の棒で先がしゃもじの様になっていて、棚から落とすだけのものだ。しゃもじは古くなったしゃもじをテープで張り付けただけのものだ。


 健太は子供の頃から瓶底眼鏡の髪がボサボサの変わった子供だったので、友達と呼べる友達がいなかった。両親も大層心配したがどうにもならない。唯一のお友達が猫の大福だった。大親友大福も一緒にその工場で時間を一緒に過ごしていた。


 そして…ゲットしたお菓子をこっそり、ミニ工場に隠れて大福と一緒に食べた。従業員の休憩時間にお茶菓子として出していたお菓子を、ちゃっかりゲットしたと言えば体裁は良いが、要は盗み食い。


 それは…ケーキや大福もち更にスナック菓子やあられにせんべい、ありとあらゆるものを猫の大福と一緒に食べた。


 だが、大切な友達でもあり戦友とも呼べる大福は、大福もちをのどに詰まらせて死んでしまった。


 ショックでショックで大福の跡を追いたい気分だ。


 のちに分った事だが、猫に塩辛いものや甘いものを食べさせ過ぎたので、腎臓病を患って死亡したとお医者様から聞いた時は「なんて事をしてしまったのだろう」と自分を責めた健太。


 唯一のお友達大福を失った健太は、あれだけ大好きだった発明にも、全く興味が湧かなくなり、幼稚園にもいかず引きこもりの毎日。だがそんな時にひらめいた。


「そうだ!何も実用的な物ばかりが発明ではない。僕は大福の事が忘れられない。大福がいるあの世に行って、また大福とあの世で幸せに暮らしたい。って事は死ぬって事か?幾らなんでも…死ぬのは、痛いし怖いしチョッとイヤだなぁ……」


 そこで考えられたのが大福を生き返らせる薬を発明しようと考えた。


「ええっと……もし不老不死の薬があったら・・・?!」


 古くには、徐福(じょふく)の天台烏薬(てんだいうやく)」、田道間守(たじまもり)の「時じくの香(かぐ)の木の実」が良く知られている。高名な名誉教授等の話では天台烏薬に活性酸素消去作用があるという研究結果が出たらしい


 天台烏薬と需要強壮に良いブロッコリー、長芋、ウナギ、ニンニク、にら、玉子、etcをミキサーにかけて混ぜた。そして…健太が実験材料となり飲んでみた。


 するとポパイの様な筋肉隆々の体系になってしまった。


 こうして長い間研究に明け暮れ僅か10歳で宇宙船を発明してやっとの事、大福の住むあの世への旅に出た。


 激しい閃光と闇を幾度も潜り抜けあの世に辿り着いた。


 あの世は何とも美しい世界だった


 最初に飛び込んで来たのは雲の階段だった。ピカ—————ッ!と後光が差したように辺り一帯が明るくなり、ルビ-やエメラルドに真珠などがキラキラ輝き得も言われぬ美しさ。そして…その宝石を散りばめた真っ白な雲の階段を上って行くと、赤や黄色や青の花々が咲き誇り緑の木立が青々と生えている。更にはエメラルドに輝く湖が、湖面に花々を鏡の様に映して何とも言えない美しさだ。


 その時だ。何と……大福が猫たちと連れ立って遊び転げている姿が見えた。嬉しくて嬉しくて「大福!」と呼んでみた。すると嬉しそうに健太に向かってダッシュで走って来た。


「大福会いたかったウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭」


「健太僕も会いたかったよ」


「エエエエエエェェエエエエエエエッ!猫なのに話が出来るのかい?」


「そうだよ!」

 折角地球からやって来たのだから、発明した生き返らせる薬を大福に飲ませた。

 すると……何と人間の美しいお姫様に生まれ変わってしまった。


「お初にお目にかかります。私は大福姫と申します」


「エエエエエエェェエエエエエエエッ!これは一体どういう事?」


「健太さん今何歳ですか?」


「嗚呼……11歳です」


「エエエエエエェェエエエエエエエッ!それにしては大きいですね」

 実は…健太は異世界転生して今16歳となっていた。


     ★☆


 健太は地球では現在小学校5年生の11歳だ。髪の毛はボサボサで瓶底眼鏡という如何にもオタク気質の息子なので女子はおろか犬猫までもが健太を避けて通る始末。


 だが、生まれた時からズ~ッと一緒だった大福だけは、健太にどういう訳か懐いていた。外見が野暮ったくオタク気質な健太は学校では変態の汚名を着せられ健太の半径5m以内に寄り付いた者は誰1人としていなかった。


「何だい?人をバイ菌扱いしやがって……フン!今に見ておれ💢」

 元々科学好きな健太はそれこそ……エジソンのようにミニ工場で日夜発明に明け暮れている。それはひとえにあの世に旅立った大福に会いたい一心で、発明に明け暮れていた。


     

 それなのに……天国に異世界転生した途端に16歳になっていた。それも何と紅顔の美少年になっていた。


「キャ―――――ッ!美しい王子様💛」

 

 健太は今までは男子にも女子にも散々な扱いを受けて来た。髪の毛はボサボサで瓶底眼鏡のキモいオタク気質な健太は、学校では変態の汚名を着せられ健太の半径5m以内に寄り付いた者は誰1人としていなかった。


「そんな俺が一体どういう事だよ『キャ―――――ッ!美しい王子様💛』って一体?」 


こうして湖に自分を映してみた。    


「おうおう何という美しい王子。これは一体……?」






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