第2話 朝 快晴


 天井から吊るされた灯りがぼんやりと室内を照らす。中央にはテーブルが置かれ、風格のある男性が腕を組んで座っていた。

 男性はこの組織のボスで威圧的な空気を放っている。ボスの周りにはサングラスをかけたスーツ姿の部下が取り囲んでいる。自分――渡利ワタリも組織の一員として同じ格好でボスの傍らに控えていた。


「お前が、噂の〈死神〉か?」


 ボスの低い声には疑いが顕著に表れている。

 無理もない。

 正面の壁にもたれているのは爽やかそうな青年だ。目鼻立ちが整った顔、濃緑のベレー帽に足首まであるマントを着用し、革製の濃茶のブーツを履いている。

 何よりも目立つのは右手に持った大鉈だ。〈死神〉というのだから、てっきり黒いマントに大鎌を持っているものと思っていたが、青年はそんな姿とはかけ離れていた。


「間違いないだろうな?」


 ボスの低い声に凄みが増す。その声で周りは緊張した空気に包まれたが、青年は乾いた笑いを返してから答えた。


「噂や異名は知らなかったけど、間違いじゃないよ」


 初めて声を聞いた、聞きやすい澄んだ声。


「頼みたいことがある」

「何?」

「殺してほしい奴がいる。そいつの首を持ってきたら報酬をやる」

「分かった」


 口調が軽い。それに会話も、これから殺しを行おうとするものとは思えない。

 軽すぎて不安になる。


「渡利」


 ボスに呼ばれ、耳をボスの口元に近づける。ボスは渡利にしか聞こえない声で言った。


「あいつに同行し、行動を見届けよ。終わったら全部包み隠さず報告しろ」

「分かりました」


 渡利は軽く頭を下げ、青年が部屋を出て行った後、ついていくようにして退出した。

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