幼馴染がツンデレメイドとして俺の家で働くことになった件
珈琲カップ
第1話 俺のメイドは幼馴染
「お前の幼馴染って可愛いよな」
昼休みになって昼食を食べている最中、唐突に親友の内田鷹人はそんなことを口にした。
「見た目が可愛いのはもちろんだけど、変なこと言われて顔を赤くするのが可愛いし、男に少し免疫がないところも可愛い」
鷹人の言葉に俺はあまりピンときていない。
「男子には少し塩対応なのもある意味でいい」
「そうなのかよ」
それも俺はあまりピンと来なかった。
冷たくされるのっていいことなのか。
冷たくされたいって中々変わった癖だな。鷹人はそんな趣味だったけ?
「だからあんな幼馴染がいるのが羨ましいよ」
俺こと、内田司には幼馴染がいる。
貴島つばめという幼馴染がいる。
生まれた時から家が隣同士で、気がついた時から一緒にいた。
そこから高校に至るまでずっと同じ学校に通っている。
切れることのないというなんとも稀有な感じだ。
「でもお前は特別にびっくりするぐらい冷たいよな」
「そうだな」
つばめは男子に免疫があまりないから、塩対応することが多いが俺に対してはそれが特に多い。
その中でも俺は他の人以上に冷たい。
冷たいというか、ドライな対応をされる。
幼馴染だから他の人以上に関係は築かれているはずなのだが、そんな対応を取られてしまう。
「冷たいというか、まあ、他の人とは接し方が違うよな」
「幼馴染だからさ。ぞんざいに扱っても大丈夫だって思ってるんじゃないか?」
彼女は決して人当たりがいいタイプではない。人付き合いは苦手なタイプだ。
ここまでの経験によって克服しつつあるが、それでも慣れていない人と接するのは苦手としている。だとしても、接しないといけない状況はあるから、頑張って取り繕ってる部分はあるんだろう。
「そうなのか?」
「そうだろ」
「だって。俺もぞんざいに扱われるぞ」
「お前の場合は単純に嫌いなんだろ」
「なんでだよ。これだけのナイスガイだぞ」
「そんなナルシスト系はあいつ大嫌いだぞ。それにつばめは本当に嫌なものに関しては遠慮なく感情出すぞ」
「嫌よ嫌よも好きのうちな場合だってあるだろ」
「それだったらお前のことは気持ち悪がって、引かないだろ」
「それも愛情の裏返しとかあったりな」
「ないない」
「まあ、俺のタイプじゃないんだけどな」
「なんだよそれ」
そういうところがつばめから嫌われている部分なんだよな。
「でも幼馴染のお前に対しては他の人とは絶対に違う態度を取るもんな。ツンツンしてるし」
「幼馴染っていうだけで付き合ってるって言われるのが嫌なんじゃないか」
よく幼馴染が恋人関係になる展開を漫画で読むけど、実際にそうなるとは限らない。
幼馴染で、小さい頃から互いに知り合っている。いるのが当たり前の存在同士。ほとんど他人というよりも家族並みに同じ時間を過ごしている。
俺たちの場合は、つばめの両親が仕事の都合で家を空けることが多かった。
その間、つばめは俺の家で過ごしていたから、家族感がより一層強まっている。
家族同然の人と恋人関係なんて言われたらいい気分にならないだろ。
だって俺からしたら姉とか妹と恋人だって言われるわけだ。
あり得ないことを言われ続けるのは嫌だ。
そういう気持ちがつばめにはあるんだろう。
それに別の理由もあるわけだし。
「でもツンツンしてるから、恋人にもしたいけど、メイドさんになってるのが似合ってる気がするな」
「ツンデレメイドって感じか」
「そうそう」
「つばめがメイドになったら、常時ゴミを見るような目で見られそうだよ」
「それやりそうだな。でもそれも悪くないと思うぞ」
「お前Mなのか」
「どっちもいけるけど?」
「そうなのかよ……………」
親友が両方行けるって、どう反応したらいいんだよ。
「相手によって性癖は変わるからな」
「性癖とかいうなよ」
「でも彼女のメイド姿はいいと思わないか?」
彼女を見て、俺は彼女がメイド服を着た彼女を想像する。
「悪くないな………」
つばめは黒髪だからメイド服が純粋に似合うと思う。
しっくりくる。非常にしっくりくる。
違和感がない。つばめがメイド服を着ているのが容易に想像できる。
それで今のつばめの性格とかだと中々いいキャラを持つメイドが成立する。
メイドにキャラなんて必要ないだろうけど。
そういうメイドが時折デレたりしたら、より一層可愛さを感じる。
つばめがデレる姿を見ていないから、あまり想像つかないけど。
「あ……」
つばめの方を見ているのをつばめに気づかれた。
目線もあったが、つばめはすぐに目線を逸らして教室から去っていった。
「あからさまに目線をそらされたな」
「あ〜いうもんだろ」
「目線あった途端に外されて、教室を出て行くってよっぽどだよ」
「まあ、そうするのも仕方がないな」
そのまま昼休みが終わり、午後の授業を受けて、放課後の部活を終えて俺はようやく家に帰る。
部活で疲れていて疲労は困憊状態だ。
早く家に帰りたい。家に帰れば、美味しい夕食が待っているのだ。
家の前に着くと、俺はインターフォンを鳴らす。家に帰ってきた時には必ずインターフォンを鳴らすのが今のうちのルールになっている。
インターフォンを鳴らしても、誰も返事はしない。
その代わりにパタパタとスリッパを履いた人の足音が聞こえてくる。
ガチャリと玄関ドアの鍵が開錠され、ドアが開けられる。
「お帰りなさいませ」
明らかに普通の住宅からは聞こえてこないようなセリフを彼女は口にする。
なぜか?
それは彼女の服装を見ればわかる。
ロングスカートのワンピースのような服。白と黒を基調としていて、エプロンが縫えつけられているという独特な服。そして『お帰りなさいませ』と告げる人が着る服。
そんな服を着ている人はメイドを置いて他にはいない。
そう。
俺の家には現在メイドが働いている。
両親が仕事の関係で家を留守にしていることから、家のことをしてもらうために両親がメイドを雇った。
家政婦さんじゃなくて、メイドさんだというのが味噌だ。
普通ならば、家政婦さんだ。それなのにどうしてメイドさんなのか。
それメイドとして働いている人に関連する。
さらに驚くべきはメイドとして働いている人だ。
俺も初めはこの人がなんでうちでメイドとして働くんだ?って思ったよ。
あり得ないもん。
この人がメイドになるなんて考えられなかった。
でも事実。
これが事実なのだ。
両親曰く、俺の好みに合わせたらしい。
確かに俺は可愛いメイドさんが出てくる漫画やアニメはよく見る方だが、どうしてそれを親が知っていて、わざわざそれに合わせる必要がないだろ。
しかもこの人にそれをさせるなんてさ。
「あのさ、早く家に入ってくれない?」
「あ、ごめん」
「で?」
「で、とは?」
「私はお帰りなさいませ、って言ったんですけど。その返しはないの?」
「そうだった」
ちゃんと返をしないというのは失礼なことだもんな。
俺は彼女ので迎えの言葉に返の言葉を告げる。
「ただいま、つばめ」
俺のメイドは幼馴染の貴島つばめなのだ。
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