第33話 茜side
翔太と水無瀬さんが部屋を出ていった後、ウチは一人小さくため息をついていた。
「「……」」
さっきから部屋に流れているのは気まずい沈黙。
目の前ではそんな静けさなど気にする様子もなく、白峰が黙ったままウチと同じように三角座りで座っている。
「なあ……翔太って学校でどんな感じなん?」
窮屈な空気に耐えかねたウチは、前から気になっていたことを尋ねてみた。
「どうって聞かれても、特に何もないわよ」
こちらの質問に対して、白峰が相変わらず素っ気ない口調で言う。
一緒に働くようになってからもう一ヶ月ぐらいは経つけれど、ウチらの距離は全然と言っていい
ほど縮まる気がしない。
思わず舌打ちしそうになるのをぐっと堪えると、ウチは我慢して話しを続けてみた。
「何もないってことはさすがにないやろ。だってアンタと翔太って同じクラスやん。学校でも喋ったりするんやろ?」
自分からそんな話しを振っておきながら胸の奥がチクリと痛む。
小学生や中学生の頃は、ウチがそのポジションやったはずやのに……。
もちろん白峰相手にそんなことを言えるわけもなく、ウチは平静を装いながら話しを続ける。
「それにほらアイツってへらへらしてるくせにけっこう気にしーで寂しがりやなところあるやん? だから学校でもちゃんと馴染めてないんちゃうかなって思って」
「そうかしら? 私からすればいつも能天気に学校生活を楽しんでいるように見えるけど」
こちらを見ることもなく、ただぼそりとそんな言葉を返してくる白峰。
そのどこか投げやりな口調についイラッとした感情が込み上げてしまう。
「べつに学校生活楽しむのは悪くないやん」
無意識に返した言葉は、思ったよりも語気が強くなってしまった。
そんなウチの言葉を聞いて、白峰がようやくこちらを向く。
「だいたい、まともに人とコミニュケーション取らへんアンタに、相手がどんな人間かなんてわかるわけないやろ」
「……」
ウチの言葉を聞いて、白峰がこちらを見つめたまま黙り込む。
そうや、愛想もなくて相手と話そうともせえへんアンタには何もわからんやろ。
「だから――」
だから翔太のことわかったみたいな口きかんとって。
ハッキリとした口調でウチはそう告げた。
付き合いの浅いアンタに、翔太の何がわかんねん。
アイツが今までどんな苦しい思いをしてきたかも知らんくせに。
ウチの言葉をどう捉えているのか、無表情のままの白峰からは結局何も返事はなかった。
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