闘心世界

ゐひょろも

プロローグ【書物】

 以降の概要は、数百年前から今に至るまで存在した伝説の人物、

 闘心協会会長のトキが書き記した書物である。

 ある男はその一部を抜粋し、音読した。


【魔神】


 それは数百年前、邪の力が封じ込まれた禁忌の秘宝、

【闘魔石】によって顕現した異形の人間。

 当初は【巨躯の異形】と呼ばれた。


 その力は視界に入った者を爪の一振りで惨殺する事ができる程の脅威と絶望的なまでの強さを持ち合わせていた。


 その頃、人類には対抗手段というものがなかった。

 何故なら神には人間の攻撃など効かないから。


 それ以前に魔神が顕現化した数秒後には7つの国が壊滅するのだから、

 予知能力でもなければ瞬時に対応はできない。


 突如到来する世界終焉の幕開け。

 全人類は絶望感に呑まれ諦めていた。


 しかし神との戦闘により死滅。

 其の後人類に害をもたらす魔物が世界各地に誕生し、

 その元凶であろう存在から【魔神】と呼ばれた。






【闘神】


 当初は【神】と呼ばれた存在。

 魔神が顕現した数分後、

 突如として天から身を現した。


 その後、瞬時に魔神の居場所を特定し相対する。

 人類存亡を賭けた戦いが今ここに始………まらなかった。

 強いていうなら話にならなかった。

 戦いにすらなっていなかったのだ。


 まず魔神による猛攻を涼しい顔をして耐えていた。

 その後、『戦技』という言葉が魔神を含む生き残っている人間の頭に轟いた。


 瞬間に世界は陰と光に包まれる。

 気づけば神と巨躯の異形の姿はそこにはなかったという。


 そして魔神によって惨殺されたはずの人類が皆息を吹き返し、

 爪による傷跡や血痕、後遺症なども見られなかったという。


 神に相応しい威厳ある姿、魔神をも凌駕する戦闘力、

 力無き人類に味方するその慈悲深さから闘神と呼ばれた。


【闘魔石】

 諸説ありの魔道具。

 いつ存在したのか、どこにあるのか、そもそも存在したのか、

 それは誰にも分からない。

 しかし中には膨大な悪魔や邪の力が含まれており、

それを自分の魂と引き換えにある神殿に捧げると、

 魔の神と化す。



【闘心力】


 神が人間に与えたと思われる元の肉体とは異なる外部の力。

 神はなぜその力を人類に託したかどうかについてはいくつか議論されている。


・人類存続のための魔物への対抗手段。

・神が自分を犠牲に魔神を道連れにし、その衝撃で起きた何らかの現象による奇跡。

・人々に自分の身を、大切な者の身を守ってほしいという願いから。


 その力は当初に受けた者以降、生後10〜15年の間に発現し、身体の一部に紋様の様なものが刻まれる。


 刻まれた者はその瞬間から身体的能力が大幅に向上する者もいれば、大して変わらぬ者もいた。


 そしてある者は気づく。

 その力は戦闘を繰り返せば繰り返す程向上し、様々な技が扱えるようになることに。

 また、体力や感情や闘志によって変化する事も観測された。


 しかし闘心力の量は人によって定められており、それの上限を超えた力を使いすぎたり、或いは使わなさすぎると徐々に紋様の色は薄まりやがて消失する。


 基本的に前者は身体を回復させれば1ヶ月弱で再び刻まれるが、

 もし戦いの途中で使い果たしてしまえば、その時は死を覚悟した方がいい。


 闘心力を持つ者と持たざる者には、絶対的な力量差があるのだから。



 その力は時が進むほど開拓されていき、

 多くの者は魔物の殲滅効率が格段に上昇。

 それにより平和を保っていた。


 しかし闘心力を授からない者も当時は多かった、何故か今ではその数は減っているが。


【魔物】

魔神が滅び闘神が去った後、世界各地に出現した魔の生物。

 別名『魔神の残骸』。


 最初こそ人類は闘心力の扱いが分からず被害に遭い、

 己の肉体で剣などの武器を用いて戦っていたが、

 力の扱いを理解してからは急速に被害が収まり、

 今では相手にならなくなってしまった。




【闘心者】

 闘心力を持ち、その力を人命救助など正しい事に力を使う者。

 『無闘者』や『非闘者』を、『邪闘者』や『闘魔』から身を守ることで知名度を上げ、

市民から優遇されていた。

 しかし世間一般から闘心者の扱いを受けるには、闘心協会に認められる必要がある。




【無闘者】

 15を超えても闘心力が発現せぬ所謂持たざる者。

 遺伝的な問題や極度の才能不足により稀に生まれる存在。

 基本的にはもう力が目覚めることはない。


 その力は闘気を纏った者には如何なる攻撃であろうと無効化される。

 この世で最弱に当たる存在。


 しかし何事にも例外は存在する。

 15を超えても、命の危機的な局面や絶望の窮地による『逆境の闘志』から、

 爆発的なまでの闘心力を開花させた者は過去に2名存在した。




【邪闘者】

 闘心力を持ちながら、非闘者や無闘者を利益目的で殺害したり略奪など倫理に反した悪行を働く者。

 その行動を繰り返す度に闘心力は消失し、代わりに【邪心力】が与えられ、

 姿形はやがて魔の者に近い造形と化す。

 闘心者達の主な討伐対象。




【非闘者】

 闘心力を持ちながら力の扱いが分からなかったり、戦闘経験が浅かったり、

 闘心協会へ入会せぬ者。

 殆どの一般市民はこの非闘者に該当する。




【闘魔】

邪闘者による力で凶暴化した犬や猫、魔物などの総称。

 噂では花や木など無機物にも力を充てることが出来るとか。



【闘色】


 闘心者の身体に刻まれる紋様のことを指し、その紋様次第で色が変化し、其々の属性を示す。

 最初は無色透明であり、戦闘を通じて徐々に性格や感情によって色が変わっていく。


  闘色は紋様の形によって決まる。

【月紋】【火紋】【水紋】【木紋】【金紋】

【土紋】    【日紋】


たとえば火紋ならば炎の属性、水紋ならば水の属性、木紋ならば草の属性が付与されるようだ。

 この闘色の変化は、個々の闘心者の経験や成長、戦闘での感情などに影響を受け、個性的な属性が発現する。


稀なる天才はその発想と転換により、水紋であれど氷の戦技を繰り出した闘心者も存在するという。




【戦技】


 闘心力と闘紋を組み合わせた技術や能力の総称。

 これは闘心者が身につけ、戦闘や対抗手段として使用する技。


 初めは単純な衝撃波やエネルギー弾を放つ程度から始まり、闘心力の量や質、闘色の影響、

 個々の才能や戦術の解釈によって多様な技が生まれる。


 また、戦技は無色透明の闘心者でも、理解度や応用、

 練度などによって様々な基礎的な技を覚えることができる。


 また、熟練の闘心者はその闘気の放出力により『絶技』という必殺技が扱えるようだ。 


【闘気】


 闘心力を持ちながら上手く発揮できない非闘者は皆これが原因である。

 闘心力はあくまで内部の力。


 それを外に放出できなければ実質的には無闘者と何ら変わりない。

 闘気を纏うには五つの流れを掴む必要がある。


 呼吸の流れ、力の流れ、血の流れ、脳の流れ、そして闘志の流れ。


これら全ての感覚を掴み、外部へ放出することで初めて闘気を纏うことができ、

 闘心力の真価を発揮できる。


【闘心協会】

 アルカトラスという国にある、

 全大陸の中央にある非闘者や無闘者を守るために設立された治安維持を保つための施設。


 この組織に所属した者は皆正義感と戦闘欲求に溢れており、

 お互いに協力し邪闘者と闘魔を討伐をするために情報源などを提供し合ったり、

 闘心者同士が戦い研磨する闘技場が存在する。


 入会すれば、日々危険な戦いに晒され、邪闘者や闘魔との闘いが日常の一部となる。

 危険度の高い依頼をこなし、人命を救うことで報酬を得られるが、無論それには相応のリスクが伴う。


━━━━━━━━━闘心協会会長 トキ

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