第13話 次の目的地は

(やっぱり、なにか変ですよね…)


 改めて考えて見ると箱を開けただけで何百万クレジットに換金出来る品物が入った小箱を、警備の手薄い露店販売をしているというのは異常です。


 店主がフォーチュンボックスを開けられるのは、一年に一度だけと話をしていました。自分で開けられないから人に開けて貰おうと考えたとして、事情を知らない者に幾らか報酬を支払って開けてもらえば済む話。


(善意…と紐解くのは危険ですね。買い取りを打診している事から、箱の中身を目的としているのは確かですが…)


 チラッと露店に視線を向ければ、店先に並べられた小箱数個を残して買い取りを望む客の対応をしている。その中には値段の安い品もあったようで、何人かの人が地味な損失に肩を落としています。


(箱を開く事になにかしらのリスクがあるのでしょうか?)


 そう考えた所で、やはり人を雇えば済むなと考えが同じ所に行き着きます。


 考えを巡らせれば不思議なもので、あの店主がフォーチュンボックスから取り出した物に高値を付ける理由も分かりません。


 あの魔晶石という物に店主は300万と値を付けしましたが、もっと少額の値段を付けたとして誰も違和感を持たなかった筈です。他に価値を知る人が紛れていて文句を言っ来たとしても、苦笑いでもしながら値段を引き上げればそれで済んでしまいます。むしろ商人ならば、少しでも安く仕入れたいと考えるのが普通です。


(分かっている事を並べてみましょう。まずフォーチュンボックスは1万クレジットです。中は恐らくランダムで品物が決まるシステムで、その殆どが1万クレジット以上の価値がある様です。この事から店主は少なくとも一つでも多くのフォーチュンボックスを販売したい事が伺えます)


 フォーチュンボックスの買付に幾らのクレジットが必要なのかは分かりませんが、他惑星まで移動と運搬を必要とするのですから相応にコストが発生しているでしょう。


(店主はフォーチュンボックスを持って帰って欲しいと言っていましたね。確か一晩くらい置いておいて欲しいとか……時間経過で何かがあったのでしょうか?)


 既にフォーチュンボックスは開けてしまった以上は、時間経過で何かが起きると行った物であるのなら気にする必要はないでしょう。


(高額とはいえ箱からの品物を買い取っているのですから、箱の中身には興味があるのでしょうが…高額…本当に高額なのでしょうか?)


 店主は品物を買い取った後、その品物を利益に還元する為の売却などを行うものと考えます。当然、自らの利益を確保出来る程度の値段は付けているのでしょうが、もっと安く買い付ける事も出来たはずです。


 もしかしたら提示された額でも、売却時と比べると相当に安く買い叩かれている可能性は否定できない。


(………このネックレスの売却はやめておきましょう。フォーチュンボックスを開けるのに何かリスクが有りそうですし、店主の鑑定眼が正しいとは限りません。しかし、目的のない放浪生活を続けるのはいずれ限界が来る)


 んー唸りながらも考えを纏め店主に「惑星ファンタルジア」への航路を尋ねた。


 店主にとっては商品の大事な仕入先であり、口渋るかと思いましたがあっさりと話してくれました。店主はファンタルジアに興味を持って貰いたいらしく、時間が出来ると方方でファンタルジアの物を売ったり見せたりしているのだとか。


 長々と考えていた疑問が解消してしまった気がしますが、興味を持ってしまったのは事実。店主の思惑に乗って次の目的地を定めました。


 聞き出せた航路を進むにも相応の準備が必要になります。愛船ロックシェルの改造もしたい所ですし、惑星ファンタルジアに向うのはもう少し先になりそうです。

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