第19話 ガラクタデコボコグッチャグチャ!
「おお、おおお!?」
「あの…大丈夫ですか?」
「ピピ(生体情報に異常なし)」
「そういうことでは…」
ブラック・ローズを見留てから、ケンは身体を震わせて叫んでいる。話しかけても反応がないので、コックピットに押し込んだのだけど、その時にまた叫び始めてこの様子である。
ブラック・ローズのコックピットは複座式であり、本来はクブアの生き残りを運ぶ為の乗り物であったため、コックピットには一人分の空きがあったのだ。
「うおおおおおおおお!?」
「ピ(うる〜さい)」
「はぁ…」
ケンの叫びは目的地である墜落ポイントに付くまで続き、自身の相棒であるグランドクラーケン号が見たこともない生物の腹に突き刺さった様子を見てまた叫んだ。
「ああ…すいやせん。取り乱しまして」
「ピ」
「はぁ、正気に戻られたのなら…」
しばらくして正気を取り戻したケンから指示を受けて、墜落した七隻の船から生きているパーツ、修理が可能なパーツを取り出して並べている。
数ある部品の中で目を引いたのは、カチメンツという鉱石種族が作った船体。ブロック工法と名付けられたカチメンツが好んで使う短縮工法の一つで、予め必要とされる機能を一つのブロック(正方形六面体の物が多い)に集約し、大量に生産、管理する事で必要な場所(六面体の各表面)に必要な分だけ接続することで、簡単に求められた物の製造を行える。
この工法の利点は単純に速さだけではなく、船を例に上げると今回の様に船体が破損し、大穴が開いている状態だとしても、壊れたブロックを切り離し、無事なブロック同士を接続する事で簡単に修理できる。またメンテナンス性にも優れていて、古くなったブロックと新しいブロックを交換するだけで、手に入れた当初の新品になって戻って来る。
ブロックの料金だけあれば、新しいブロックを購入して接続するだけで増設も可能だ。自分の思うままにカスタマイズ出来る船には、船乗り達の愛着も湧く。
ただ接合部分が全面に有るので、適当に組み上げると装甲のない配線丸出しの船程度の防御能力しかないとか。つまり耐久性に難があるので、普通の船乗りは使わないのだとか。好んで使うカチメンツは無呼吸と岩の様な頑丈な身体があるので、裸のまま船外活動で修理するのだとか。しっかりと設計してやれば、最高のパホーマンスを発揮するだけに、
ブロック工法とは真逆に私が外縁したいと思ったのは、マッシュウッドが使う木造船です。彼等は菌類から進化した生物で、見た目も生態も私のよく知る人類と大差ありません。ただ彼等はなんと無呼吸で活動する種族なのです。その為か彼等の作る宇宙船とは、気密性を気にする必要がないために生産効率の良い木材を使用して船を作っているのです。
彼等の船造りは生産数を最優先としていて、安全性は二の次です。木材には漬け置くタイプの薬剤で処理されては居るものの、強度は頑丈な木材程度。そんな船体に乗せる各設備も、当たり前の様に数頼みの量産品を搭載、正に動いて撃てればそれでいいを体現しています。
そんなマッシュウッドの船は、何一つ使えそうな部品を残さずに燃え尽きてしまったようです。むしろ有り難かったかも知れません。
「よーし、俺のグランドクラーケン号には及ばないが、シーリング、カチメンツ、インセクティア、ガーランド、オンレヒト…よくもまぁ集まったもんだ」
「これで宇宙船……作れますか?」
ケンは顎に副腕を当て唸るように絞り出した。
「う〜ん…幸いカチメンツのパーツのおかげで動かす分には問題ないが、推力が心配だ」
「推力…エンジンですか?」
「惑星から飛び出して、直ぐに撃たれ兼ねないだろ…。そうでなくても交易センターまではどうやって進んだ?」
「エンジン周りは、盛大に爆発してましたから…」
その言葉で目視による部品の見分けが、困難な程にバラバラグチャグチャとした現場を思い出し、二人は見合う様にため息を吐いた。
「惑星の重力はフィール…重力遮断フィールド生成機が無事だから心配はねえ」
フィールドを生成すると重力の影響を遮断する便利な装置は、なんとケンさんのグランドクラーケン号から取り出した部品です。破損した様子もなかったので、エネルギーを入れて再起動したら動いた見かけより頑丈な子です。
「どんなオンボロでも良いのでしたら…」
「なに?」
私はセーフハウスで保管している「ブルモド参」を思い出して提案する。
「少しばかり不安だが、賭けてみるしかねぇか…」
「ピピピ」
「では取ってまいります」
「ああ、たの、頼んます」
飛び立ってゆくブラック・ローズの背中を見送りながら、背を伸ばすようにケンは四本の腕を空いっぱいに掲げた。
「人型ロボとか最高かよ!!」
人種が違っても、男の夢見る先は同じなのかも知れない。
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