銀併の歌姫様
灰猫
鋼の星クブア
第1話 産声
一滴、また一滴と黒黒とした空から鉄を溶かす雨が降り注いでいる。その雨の到達地点にあるのは、かつての文明の残り香。廃材が積み重なった荒れ果てた都市であった。
降り注ぐ雨が溜まった故か、遂に支えとなる廃材が溶け切ったのか、廃材が積み上がった山の一つが大きな音を立てて崩れ落ちた。
(……a.a.a)
崩れ落ちた廃材の中で、一個の機械が再起動を始めた。それはこの惑星において、実に数百年振りとなる文明の輝きであった。
やがて雨音が激しくなり、雷鎚が轟いて新たな一日が始まる頃、それは立ち上がった。
(
バチリと体躯に電光が弾けて作り物の瞳に生気が灯り、瞳のレンズが異音を発しながら細かく駆動する。
「…お腹……空いた…」
数十時間の自己演算の結果として、機械の肉体を持った新たな生命体が産声を上げた。
かつてはガイドノイドと呼ばれ、訪れる人々の観光案内を始めとしたサポートを目的として開発された機体であった。人に接する為に近しい外見を目指して作られた
人類が自分の肉体に埋め込むコンソールが一般的になると、ガイドノイドは次第に姿を消していった。ガイドノイドの代わりに量産が盛んになったのは、
富が集まれば貧富の差はより顕著なものとなった。既に宇宙での生活が当たり前の時代に移行していた。多くの貧困層が新天地を求めて開拓惑星に乗り込んだが、彼等がそんな危険な賭けに踏み切ったのは、より危険な争いから逃げ延びる為の手段であったのだ。
人類の歴史に戦争は切り離せないのか。指導者のいない賊と、宇宙進出を機に連合国となったユーレジアとの戦いは人類を完全に二分するまで続いた。始まりこそ賊のなり損ないであったが、やがて各地の反政府組織が合流。ユーレジアのリソースをジワジワと吸収し、帝国を名乗り建国。ミューレニア帝国が誕生した。
ユニティブの参戦。
アニメーションを除けば、人類の歴史にその巨影が現れたのは記録に残る限り、初めての事であった。ミューレニア帝国建国式にて初代皇帝の力の象徴である人型機動兵器
ユニティブの登場により、宇宙船の航行はより困難なものになった。自らの利益の追求の果に産まれた帝国の国民性か、宙賊の手にユニティブが渡り、民間船を襲撃する事件が起き始めた。これまで使用されていた小型船外機とは比べ物にならない性能を誇るユニティブは、両国問わず甚大な被害を齎した。
連合国も帝国との戦争に対応すべく、連合国製のユニティブを開発し、戦争は激化の一途を辿る。
本星での激しい戦いにより、次第に生物の生存が困難な重汚染地区が拡大。外惑星の開拓が行われていた事もあり、大多数の人類は本星から脱出。本星に残った僅かな人類は時間の経過と共に過ぎ去り、今新たな生命がこの星に芽吹いた。
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