青天井に手を伸ばす
陸離なぎ
プロローグ
教訓
立場や環境が大きく左右するものではあるけれど、人を活かすことも殺すこともできる。言葉には、そんな力が宿っている。
それがわたしの生きてきた人生の中で、教訓とも言えるくらい強く学んだことだ。
最後に元気な両親を見たのは五年前……わたしが小学五年生の年の結婚記念日で、ふたりが旅行へ出かけた日の朝だった。
お母さんは「来年あたり、弟か妹が生まれるかもよ」なんて言っていて、お父さんは苦笑いをし、お兄ちゃんは顔を引きつらせていた。そのときのわたしはよく分かっていなかったけれど「妹がいいー」なんて喜んでいた。
だけど。両親に来年がやってくることはなかった。
旅行先に行く途中で突っ込んできた車に跳ねられ、お母さんは即死だったそうだ。お父さんは一命を取り留めたものの、お兄ちゃんと一緒に慌てて病院へ駆けつけたときには危篤状態だった。
――兄妹支え合って生きるんだぞ。
それが、お兄ちゃんが一旦家に帰っている間にわたしだけが聞いたお父さんの最期の言葉で、その日からわたしとお兄ちゃんは二人で暮らすことになった。
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