第60話 鉄鍔の錆色

この数日、たまたま入手した鉄鍔と縁頭を色々と試してました


鉄鍔も縁頭共に赤錆びが全周に回ってしまっていて通常ならば諦めてしまうレベルの品物だと思います

元々おまけのような形で元手は掛かっていませんから何とか復元を目指してみようと考えました


今回は錆びについて何とかしないといけないと思いましたが本体を痛めつけては何にもなりません

化学的な材料では錆び以外のダメージがありそうです

今まで水分は厳禁だと思っていましたが、この錆び具合についてだけは試してみました


用意したのはクエン酸を溶かした溶液です

単純にクエン酸だけですからダメージは薄いと思います

時間も漬込み過ぎずに時間を測り比較しました


薄い溶液だった事もありますが丸一日でかなり錆びが落ちました

続いて乾燥ですが、その前にクエン酸をしっかりと落とすために純水に半日ほど浸して最後は軽く流して乾燥させました


この乾燥の仕方次第では再び錆びを呼んでしまうと思いましたが上手にカラカラの状態になります

数日置いて更に安定させてから軽く爪楊枝を使ってしつこい固まりを落としました

そうして出来上がったのは錆びは無くなったものの、同時に色艶をスッカリ落としてしまった老人のような金属です


これではダメですから表面を処理しないといけません


ここで普通ならば色揚げを行うと思いますが、今回はあくまで実験を兼ねていますから以前に入手したタンニンを使用しました

タンニンを極少量薄めて使い、特に錆びの酷かった箇所に穂先の小さな筆を使用して試しに二センチ四方程度に塗布してみました

置くこと一時間、触れてみると既に表面は乾いています

とても早いです


塗った個所も目立たない箇所でしたが既に見違えています


というわけで、裏表にシッカリと塗布して数時間置きました

普通ならば鍋などを使用して煮詰めるらしいですが、その手間を完全に省いてしまいました

結果的に数時間後には乾燥してしまい、かなり良い色艶となりました

正直な話、こんなに簡単に錆色が付くとは考えてもみませんでした


次はもう少し経年の結果の色つやが欲しいと思い再び軽く塗布してみました

再度乾燥させて、今度は新聞紙を柔らかくしたものと乾いたウェスで優しく拭き上げと磨き上げをしてみました


触った感じも色艶もかなり良いものが復活出来ました


あれだけ錆びていた鍔と縁頭が言われても分からないレベルまで復活出来ました

これだけの短時間でこの出来具合には正直驚きです


この後は普通に壁掛けの鍔掛けに保管してみます

時間経過でどの程度の変化があるのか、無いのかを検証です

作業で錆びが見た目で消えてしまい更に古色の出た色艶のある鉄鍔として復活してしまうとは思いもしませんでした


ある方がネット等で仕入れた刀装具に手を入れて再び販売している事は何となく噂で聞いた事があります

気持ちは分からなくも無いですが、復活お化粧した品物を何事もなく販売してしまうのはちょっと違うと感じます


私の場合はこれらはこのまま手元に置いておくつもりです










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