第弐拾参舞

トランプで遊ぶのも飽きてきて次は何をしようかと考えているときだった。


「あの…さ、舞桜まおは5年前の百鬼夜行の事件について、覚えてる?」


いつになく真剣な顔になるまい


もちろん覚えている。だってその日にお母様は…。


「ニュースでは霊操師れいそうしによって引き起こされたテロ行為みたいに報道されてたよね。それを解決したのは近くにいた除霊師じょれいしってことも」


私の目をまっすぐに見てくる。


「その除霊師じょれいしって舞桜まおのことだよ…ね?」


「…どうしてそう思うの?」


「単純にそんなことをできそうな人を舞桜まおしか知らないからね。まぁほとんど勘なんだけどさ」


「別に隠すつもりはないから言うけど…その通り。私のことだよ。でもなんで急にそんな話を?」


「…あのさ、もし、もしさあの百鬼夜行が目眩めくらましだとしたらさ…犯人は何を狙ったんだと思う…?」


あれが目眩めくらまし…?


「それってどういう意味なの?まい


「っ!」


ギュッと胸を抑えて苦しそうな顔をするまい


「だ、大丈夫…?」


「あはは、やっぱり舞桜まおみたいにかっこよくはなれないよ…ゴメンね私、自分1人すら、守れない…みたい」


苦しむまいの手足が銀色の毛が生えた獣のように変わっていく。


「あ~あ、心配…かけたくなかったん、だけどなぁ」


そう言うまいの胸に目玉のような模様が見えた。


あれは…呪詛じゅその印!?


まいは誰かに呪われてる


ずっと一緒にいてどうして気づかなかったの私!


そう後悔するのと同時にまいが外に飛び出していく。


その意味に気付いた私も急いで近くに置いてあったアヤメ(刀)を手に取りまいの後を追う。


四足歩行で走るまいは速く、徐々に距離を離される。


…というか、スカートで四つん這いは不味くない?


緊急事態だというのにそんなことを思ってしまったのだが流石さすがまい。尻尾を?のようにしてスカートを押さえている。これなら見えることはないだろう。


常備している御札おふだに霊力を込めて巫女装束に着替える。


原理は聞かないで…。じゅつの1種と言うことで…。


その後すぐに阿津斗あつとに電話をかける。


いつも通り3コール以内に出てくれた。


「どうし…」


まいが暴走する!多分人工島の方に向かってる。付近の住人の避難を優先させて!最悪緋巫女ひみこの名前使っていいから!できるだけ急いで、時間がないの。私はまいを追うから切るよ!」


阿津斗あつとの言葉をさえぎり一方的にそういった後、電話を切る。それと同時に連絡用のインカムを右耳に付けた。


緋巫女ひみこの名前を出せば政府の方も動いてくれる。恩を作るなんてやりたくないけどわがままは言ってられない。見返りに何を求められたってやってやる。


人工島というのは土地開発の一環で作られた埋め立て地のことで今はただ風力発電が並んでいるだけの場所だ。


…待っててまい、絶対に助けるから


そう心に誓ってまいを追いかけ続ける。

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