異世界召喚されたら異世界人が全員フラグ建築士1級だった件 〜異世界人はフラグを回収しないと気が済まない〜ちなみに最後の敵が異世界そのものってことはないんだからね!

@simassima

第1話 変人しかいねーな

「俺が無事に日本に帰ったら結婚しよう」

「えぇ!待ってるわね」


その日。飛行機は謎の事故によって墜落した。127人中126人が無事に生還。たった1人の死亡者。それが俺だった。


‎「• استدعاء (للمثول أمام المحكمة)」


!?ここは!?


「おぉ。無事召喚されたか勇者よ。わしらはこちらの世界の波長に合う知的生命体を召喚したのじゃ。じゃからこちらの生活にも不自由しない事を約束しよう」


いかにも王様らしき風貌のおじいさまと、召喚術師のような人が俺を出迎えてくれた。

「そちらの波長に合う知的生命体?つまり気が合うと言う事ですか?」

「おそらくそうじゃろう」


気が合う人しかいない世界か。第2の人生としてそれは悪くないかもしれない。

俺みたいな性格。つまり彼女に、「無事に日本に帰れたら結婚しよう」って言うような性格ってことか?なーんてね。


「そうそう、これは雑談なのじゃが最近わしの弟が姿を見せないのじゃ。強くなって驚かせてやるとか言っていて気がするが…いやはや、魔王にでもなっていなければ良いのじゃが…」

「まっさかー。そんなわけ無いじゃないですかー!王様の弟なんですから世のため人のため何か大きな事をしているに違いませんよ!」

「そうじゃといいんじゃが…」


すると慌ただしく入ってくる1人の兵士に全員の注目が集まる。


「大変です!国王様の弟、フラッグ様が魔王として世界を滅ぼそうとしているらしいです!魔王は国王様の弟でした!」

「「「なにいいいいい!?」」」


フラグを建てておきながらいかにも想定していませんでした。と言うようなリアクションを全員がとったシュールな光景になってしまった。


「まさか。流石にあの金庫に入れてある伝説の杖までは盗まれてはおらんと思うが一応確認しておいてくれんかの。あの杖が盗まれていたら世界は終わりじゃ。流石にそれはないと思うがの。一応もう1度言うが流石にそれはないと思うが」

「世界が終わる!?だとしたらもうとっくに世界が終わっているはず!流石にそれだけはないですよ!」


暫くして騎士の人がもう1度慌ただしく部屋に入ってくる。

「盗まれていました!あの伝説の杖が!!」


「ええええええええええ!?」



おかしい。俺はそう思った。だってそうじゃないか?さっきからフラグを建てては回収しているようにしか見えない。まるで飛行機に乗る前の俺みたいではないか…いや待てよ?俺みたい?波長が合う人?つまり…


「まさかこの異世界はフラグを建てて回収する人しかいない世界なのかああああああああああ!!!」

「どうしたのじゃ。フラグってなんじゃ。建てたものを回収って効率悪くないかの…どんな建物なのじゃ?」


白々しくフラグを知らないフリしやがって!


「そうじゃ。これから魔王を討伐するための仲間を手配した。入っておいで。自己紹介をしなさい」


「「「はい!」」」


「俺はステルベン!魔王を討伐したら彼女と結婚するんだ!だからそれまで絶対に死なない!信用して俺に背中を預けてくれ!盾使いだ!」


(こいつ死ぬな。あとステルベンってドイツ語で『死ぬ』って意味じゃなかったか?これはメタ読みしすぎか…)


「次は僕だね!僕は科学者のモリール。股間の研究をしているんだ。だから股間への攻撃は危険性がわかっている分必ず避けるよ!もう1度言うけど必ずね!そして敵を倒すたびに必ず『やったか!』って確認を入れるから不意打ちを喰らう可能性を減らすことができるんだ!弓使いだよ!」


(「やったか」って言う事によって敵が復活するから、かえって足手纏いなんじゃないか?あとこいつ絶対に股間にダメージを負うような自己紹介だな。それとこれもメタ読みだけど、こいつの名前も、『モリール』はスペイン語で『死ぬ』って意味だな)


「最後は私ね!私の名前はビットレイ・フォン・クオレマ!私は正直者で決して人を裏切らない!一途な女の子!勇者のためなら私なんだってやります!魔術が得意です!」


(元気でいい子じゃないか。この世界がフラグを回収する世界じゃなければの話だがな!!フィンランド語で『クオレマ」は『死』って意味だった気がする…それに『ビットレイ』は英語で『裏切る』だったような…不吉だ。あまりにも不吉すぎる…こいつ絶対終盤で裏切ってくる)


はぁ、この中で1人でも本当の正直者がいればいいんだけどな、って。この世界でそんな人がいるわけ無いか。念のためもう1度言うが、『そんな人がいるわけがない』(フラグ)


「ビットレイ・フォン・クオレマは選抜した仲間の中で唯一貴族の娘だ。大事にするんじゃぞ」

「わかりました!」


(ろくな旅になる気がしない)


「これは旅の資金。100000G(ゴールド)じゃ。大事に使うんじゃよ!」

「ありがとうございます!」


「さあ!ゆくがよい!この広大な世界でたった1人の魔王を討伐する旅に!!」


なんだかワクワクしてきた!仲間がまともならもっとワクワクしてるんだろうけど…


こうして始まる、ネタバレとフラグ回収しかしない異世界の物語。果たして勇者は無事に魔王を倒すことができるのだろうか。いや、果たして魔王を倒せば終わるのか…まだ深い闇が眠っているのではないか…実はラスボスはこの世界の全住人だったりはしないだろうか。


なーんてね。


そんなわけ無いよな。


続く。

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