シャークエイリアン 奴らは隕石に乗ってやって来る

甘宮 橙

第1話 中国:考古学者 マー教授

 もう夜中だと言うのに、空は相変わらず血のように赤く染まっているな。私は専門外だが、これは大気の影響なのだろうか?

 だが、今はそんなものはどうだっていい。ついに……ついに今日、この瞬間、私達の学説が証明されたのだから。

 私の気分は……ウェイ! ウェイ! ウェ~イ! チベット、ヤッバ! 鬼ヤバ! ……と言ったところだ。


「ついにやりましたねマー教授! チベットの山奥の洞窟に約2万年前の壁画! 教授の学説通りに、この地にも太古の時代から優れた文明があったんだ!」

「ウェ? い、いやいや、君達の協力があったからこそだよ」


 いきなり話しかけんなよ。威厳危ねぇ。マジ危ねぇ。

 しかし、調査隊のみんなも疲れが吹き飛んで、いきいきしている様子が手に取るように分かんな。


「教授、この壁画は……サメ? でしょうか?」


 サメだと? こんな山奥の洞窟で2万年前にサメの絵? マジありえないっしょ。

 だけど三角の頭や雫状の胴体につけられたヒレ的なものなど、サメと言われれば確かにそう見えんな?

 他の壁画には何が書かれてんだ? と気になって奥の壁画に近づく。

 

「こっちは星を見上げている絵かな? ただ不気味なのは、背景が真っ赤に塗りつぶされていることだね。まるで今日の空みたいだ」

「そう言えば昨日、この付近に小隕石郡が落ちたってニュースで言ってたよな?」


 調査隊員達の会話が耳に入る。

 隕石だと? 調査に没頭してニュースを聞いてなかったな。しかし、それが本当なら……チベットはマジパネェの宝庫じゃね!? でも、サポートの件で問題がないか気になんな。


「一旦、麓の待機隊に無線で連絡してくれないか。状況に問題はないか確認してくれ」


 と俺が指示を出すと。

「分かりました」と若い調査隊員が無線機を取る。若いのによく仕事ができるやつだ。


「こちら調査隊。待機隊、聞こえますか? オーバー」

『……ジジ……ジジジ……』

「どうしたんだろう? こちら調査隊。待機隊、聞こえますか? オーバー」

『……ジジジ……はあ、はあ、はあ。調査隊、無事だったか。こっちはヤバい。ヤツラに食われる』

「ヤツラ? 一体何があったんだ?」

『隕石だ! 隕石がドバ~ンって来て、サメがビューって来て、俺等がグハーって』


 おいおい、言葉覚えたての幼児かよ。何かパニックになっているようだが何も伝わんねぇっての。


「何だって!? 昨日の隕石群から空飛ぶ人喰鮫が出てきて、人間を襲っていると言うのか? オーバー」


 嘘ぉ? マジ嘘ぉ? 何であれで通じんの? ジェネギャ(ジェネレーションギャップ)ヤベ~。マジ、ヤベェ~。


『その通りだ。今、俺も宇宙から来たサメに襲われて身を隠している。うっ、うわあっ! …………プー……プー……プー……プー……』


「おい、どうした? 何があった?」私は思わず無線を奪って声を荒げる。


『す、すまん。オナラが止まらなくなってしまった』

「早よう死ねや!」

『う、うわあああぁぁぁぁぁ…………』


 その後、何度応答しても返答が返ってくることはなかった。


「しかし、赤い空の日に空飛ぶサメが襲ってきただと? それじゃあ、この2万年前の壁画は……」

「ええ、そうです教授。2つ目の絵は星を見上げているのではなく、赤い空の日に落ちてくる隕石を描いたものなのです。そしてサメの絵。この2つの絵から推察するに2万年前にも同じことが起こっており、隕石から飛び出してきた空飛ぶ人喰鮫に恐怖して記した絵がこの壁画なのでしょう」


 若い隊員の言動に私は尋ねずにはいられなかった。


「……お前何でそんなセリフが説明的なの?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る