46話 どう思ってるの?
「ちょ、ちょっと待ってよ!!なんでママと蓮が一緒なの?おかしいでしょ!?」
「うん?なにもおかしくはないじゃない?蓮ちゃんとは久々に会ったからこうなるのは当たり前でしょ?」
「当たり前って顔しないでくれる!?これは明らかに……!!」
「は~~いっ。いってらっしゃい~!デザートはあんま食べないようにね?ロールケーキ買って来たから!」
「あら、藍子~~ふふっ、ありがとう。さすがは私のベストフレンド!!」
「藍子さん!?」
蓮の母親―――藍子が玄関に現れると、まるで図っていたかのように茜が手を振る。
互いの母親によって、蓮と莉愛はただただぼうっとするしかなかった。
「じゃ、そういうことで!いってきます~!」
「はいっ、いってらっしゃい~!」
「ちょっ、ママ!?あ、藍子さんまで……!!」
「ふふっ、莉愛。ちょっとこっち来て?」
「なによ!!また変なことするつもりでしょ!?」
言葉ではそう言いながらも、莉愛はしっかりと茜に近づく。
その後に、茜は自分の娘の耳元に―――周りには決して聞こえない音量で、耳打ちをした。
「頑張って、藍子と雅史さんの点数稼ぐんだよ?」
「~~~~~~~~~~っ!?!?」
「ふふっ、じゃ行ってきます~!」
「な、なんでそれを……!ちょっ、ママ!!」
なにか言うも前に、茜は連の手を取って素早く家から出て行ってしまった。
取り残された莉愛は口をぽかんとしながら思う。どうして?なんで?どうやって知ったの!?
付き合ってるの、両親は分からないはずなのに?バレていないはずなのに……!?
「ふふっ、ママが行っちゃったね~~莉愛ちゃん」
「あ………ははっ。そ、そうですね!」
「じゃ、私たちも楽しく内緒話をしましょうか~」
「えっ?」
莉愛が目を丸くすると、藍子が両手を合わせながら首をかしげる。
その顔には、笑みと嬉しさしか咲いていなかった。
「蓮のことどう思ってるの?莉愛ちゃん!」
「………………えっ、ええええええ!?!?!?」
「それでね、蓮ちゃん!ぶっちゃけ、莉愛のことどう思ってるの!?」
「……………………………ええ?」
なんだ、この目まぐるしい展開は。
蓮はそう思わざるを得なかった。だって、近所のカフェに着いた途端にそう言われてしまったのだ。蓮の立場からしたら展開が早すぎた。
いきなり茜との約束が決められて、朝ごはんを食べたとたんに家から連れ出されて、気が付いたらカフェに座っているのに。
そんな状況下で、茜はニヤニヤしながら莉愛との関係について聞いてくるのだから、仕方がないのだ。
「ははっ、どう思ってるかってな、なんのことでしょう~!?」
「相変わらずウソが下手だね、蓮ちゃん~そういう蓮ちゃんも好きだけど!」
「……あの、茜さん?」
「うん、なに?」
「……どこまで知ってるんですか?」
「ううん~~どこまでかな~~まあ、確かなのは」
そこで再びニヤッと笑いながら、茜は言葉を続けた。
「うちの娘が蓮ちゃんに溺れている、ということだけは分かっているかな。今も、昔も」
「昔も?」
「昔も」
「本当にどこまで知ってるんですか!?」
「やだな~~私の口からそんなこと言わせないでよ~~それはあまりにも野暮ってものじゃない。娘の恋愛事情に一々口をはさむめんどくさい母親になりたくはないのよ~~」
「親子そろってめんどくさいな、もう……!」
「あはははっ!!とにかく、蓮ちゃん。一つ聞きたいことがあるけどさ」
頼んだカフェオレを一口含んでから、茜は体を前に乗り出す。
それから見せてくれた顔はおちゃらけでもなく、からかうものでもなく。
娘とその幼馴染を暖かく見守る、大人の顔だった。
「莉愛のこと、どう思っているのか聞かせてくれないかな?」
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