第21話 御神木を生き返らせる

 仕事、御神木を生き返らせること。


 ジャスには未だにそんな事ができるとは信じられないでいた。



 御神木の所に着くと、村長や村の偉い人らしい人が何人か待っていた。


「お待ちしておりました」


 村長はアウルに丁寧にお辞儀をする。アウルはそれを無視して御神木の前に立つ。


「ちょっと離れてろ。邪魔だ」


 無礼な言い方だが村長は素直に従う。




 アウルは荷物から何やら液体の入った大きな瓶を取り出すと、御神木の周りを囲うように振りまいていく。


 そして、御神木の根本を両手で掴むと、突然強い光がアウルと御神木両方を包み込んだ。



「何も見えない……」

 ジャスは思わず呟く。光が強すぎて何が起こっているかわからない。


 しかし次第にその強い光が形を変えていった。根本から折れているはずの御神木の光の輪郭が、みるみるうちに高く高くなっていったのだ。



「オオォ」


 周りの人々から感嘆の声が上がる。



 突然、光が消えた。


 そこには、立派にそびえ立つ、立派な大木があった。


「御神木が蘇った……」

 周りにいた人が呟いた。


「本当に、御神木が生き返った!」

 その言葉を皮切りに、周りにいた人々はわっと沸いた。

「さすが大魔法使いだ!」



 周りの人が大騒ぎする一方で、アウルは疲れた顔で御神木の幹に寄りかかっていた。


 クロウが静かにアウルに近づく。

「平気?」

「ああ」

 短く答えると、アウルはゆっくり体を幹から離した。そして興奮している村長に

「じゃあ、仕事終わったから帰る」

 とだけ言うと、荷物を仕舞いだした。村長は慌ててアウルに駆け寄る。

「ありがとうございます。何が食事でも召し上がって行きませんか」

「いらねぇ。それより支払いをきっちりしてくれりゃいい。コイツを通して払え」

 アウルはクロウを指さして言った。クロウは村長にニッコリしてみせる。


「後日代金回収に向かいますのでー。一銭もまけれないよ」


 そして、クロウはアウルのしまった荷物に魔法をかける。

「ジャスくん、今度は軽くする魔法かけてあげたから、アウルの荷物持ってあげて」

 急に話しかけられてジャスは慌てて荷物を持つ。本当に、昨日とは比べ物にならないくらい軽くなっている。まるで羽でも持っているかのようだ。


「あれ、そういえば、クロウに魔法かけてもらうと高くつくんだっけ…?」

 ジャスがつぶやくと、クロウは笑った。

「初回限定だよ。嫌なら解くけど?」

「いえ!ありがたく!」


「おい、早く行くぞ」

 アウルはもうすでに先に行ってしまっている。


 クロウとジャスは慌ててその後を追う。




 ジャスは村から出る途中、遠くの方にオーブの姿を見た。オーブはこちらを向くと、丁寧におじぎをして、口を大きく動かした。『ありがとう』と言っているようだった。


 彼女が今後この村でどうするかはわからない。少しでも幸せになってくれたらいいな、と思った。

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