第14話 嫉妬もすんだろ


 三人は、アウルの家から歩いて森を抜けていく。

 ジャスは歩きながらふとたずねた。


「飛んだり、瞬間移動みたいなことしないの?」

「魔力温存だ。今回の仕事は大量の魔力を使うからな。森を出るまでくらいは歩く」

 ふうん、とジャスは鼻を鳴らした。

「ところで、どこに、何しに行くの?」

「遠くに、仕事に行く」

「そりゃわかるけど」

「大木を生き返らせに行く」


 大木を、『生き返らせる』?


 一瞬ジャスは言葉を失った。


「生き返らせるって…枯れた大木を?」

「枯れたっつうか、雷に打たれて真っ二つに幹が割れちまったらしい。それを、生き返らせろと」

「そんな事」

 魔法使いとはいえ、そんな事出来る訳がない、と言いそうになったが思い出した。


 目の前にいるのは『死者をも蘇らせる大魔法使い』なのだ。


 しかし、前にクロウは「死者なんて蘇らせれる訳がない」と一蹴していたはずだ。


「そんなの一体どうやって…」

 と言いかけた時、ジャスのお腹がグーっと大きな音を出した。結局朝何も食べなかったのでお腹が空いたのだ。

 クロウがケラケラ笑っている。

「随分と正直なお腹じゃん」

 ジャスは真っ赤になる。


「歩きながら食べてなよ」

 そう言って、勝手にジャスのカバンからさっきのパンを取り出して渡す。


 さっきあれだけ食べるわけにはいかない、と言っていた手前、すぐに食べるのは抵抗があったが、クロウがあまりに自然に渡すので思わず手に取った。


「俺が食えって言えば文句言うくせに、クロウの言う事はきくのか」

 ジャスの様子をみて、アウルが不機嫌そうな顔をする。


 そんな様子を見たクロウはニヤニヤしだした。

「なぁに?アウル嫉妬?」

「嫉妬って…」


 ジャスは呆れたように呟く。嫉妬じゃないだろ、あれは完全に自分の思い通りにならなくてキレてるだけだろ。


 しかしアウルは否定もせずに不機嫌な顔を隠さないままだ。

「そりゃあさっきから二人でそんな態度取られたら嫉妬もすんだろ。当たり前だ」

「嫉妬するアウルかわいーなー」

 クロウが茶化す。


 アウルはジャスの手首をグィっと掴んで見せた。手首につけられている銀の腕輪が光る。


「これは俺のだからな。いくらテメェでも取ったら許さねぇぞ」

「わかってるよー」


「いや、僕はお前のモノじゃない」

 ジャスは慌てて訂正しながら手首を掴んでいる手を振り払う。

「全く、勝手にこんな腕輪付けられたのもまだ許してないんだからな…」


 そんな風に話しているとまたお腹が鳴る。


「おい、テメェ早く食えよ。いい加減うるせぇぞ」

 さっきまでへそを曲げていたくせに突然アウルは文句を言う。

「パン食わねぇなら熱々のコーヒー無理やり口に流し込むぞ」


「やめろよ」

 諦めてジャスはパンを口に入れる。


 流されてしまっている。このまま流されて花嫁になってしまうんじゃないかと少し不安になる。


「よし、とりあえず食ったか」

 ジャスがパンを食べたのを確認すると、急に肩を抱いた。


「何すんだよ!」


「ちょっと黙ってろ。暴れると危ねえぞ」

 アウルにそう言われた瞬間、体がフワッと一瞬浮くような感覚を感じた。


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