罪人王女の素晴らしき人生

@sanmoon

プロローグ

 その時、彼女はいつもと変わらず、平然とした様子だった。一国の崩御という歴史が動く瞬間のはずなのに、この出来事に抗うわけでもなく、淡々とこの事実を受け入れているその落ち着きに、周囲は戸惑いを隠せない。

 

 一人の男が、彼女の後ろ姿を眺めながら、佇んでいる。そして、自分の中に渦巻く感情を整理できずにいた。


 彼女への罪悪感か後悔、それともすべて終わったことへの安堵だろうか。


 自分のことなのに、もはや自分では収集のつかないスピードで、とめどなく溢れ出る感情に眩暈をおこす。そして最後に強く残る感情は、彼女を失うことへの恐怖。


 しかし、自分の気持ちとは裏腹に、彼はただ茫然と、捕虜となる彼女を見ていることしかできなかった。



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