須佐探偵事務所(仮)
上面
何でも切れます。
俺がヤクザ(♂)の死体をばらして冷蔵庫に一旦仕舞っていると人が来た。二人分の足音が聞こえる。片方は大人で、片方は子供だろう。両方とも女だな。気配を通り越して重圧を感じる。これは奴か。
黒髪長髪の女がそいつに似た顔つきの小学生くらいのガキを連れて俺の事務所にやってきた。
「預かってくれない?」
女は俺に子供を預けようとしてきた。何時になってもこの気配は慣れない。本人は悪い奴じゃないんだが、俺の身体と相性があまり良くない。鳥肌が立ってきたな。
「しゃーないな」
俺は女に大きな借りがあった。女の名前は
「ほら、自己紹介」
「母がいつもお世話になっています。
これから知らない相手の世話になるというのに不安を見せない。なかなか骨のあるガキだ。斬島姓ということは本当は
長男の方は田中の家預けていたし、またそっちに預けろよ。いやでもリスクマネジメント的には同じ家に預け過ぎると危険か。
「
名乗られたら名乗り返すものだろ。まあ戸籍はこの名前で登録しているし本名ということでいいはずだ。
「
「でしょー?あっちの方がまた不穏な状況になってきたから移ってもらうことにしたの」
斬島家は人斬りの一族で闇の社会ではなかなか有名だ。御試御用が明治にその役目を失ったと共に何故か飛躍しつい最近までブイブイ言わせていた。
しかしお互い忙しくて同衾する機会も無さそうなのによく二人目も作れたな。それに人間と神だと生殖も難し……別にそうでもないか。
亜沙が預けられてから時間が過ぎ、俺の仕事がだいぶ楽になった。俺は探偵事務所をしているが、ここ来る依頼のほとんどは怪異や悪霊をどうにかしてくれというものだ。人間を消したかったり、秘密を探りたかったら別のところに依頼が行く。行ってくれ。殺人は専門の業者に行ってくれ。暗殺はそんなに面白くもないし、いつ貸し借りで見過ごしてくれるラインを超えて
本日は昔殺人事件があった一軒家に何かよくわからないものがいると闇の不動産屋に泣きつかれて、仕事だ。散歩みたいな仕事だし、亜沙一人でも何とかなるだろ。大丈夫じゃないと俺が
「行け」
亜沙の命令で不定形の冒涜的な生命体が名前も知らん怪異を挽肉にする。
アレたぶんショゴスだよな。俺は詳しくないんだけど。なんでショゴスをサラッと召喚できるようになっているんだ。知り合いの陰陽師にリモート授業させたとはいえこんな物覚えいいものなの?
「姐さん、終わりました」
ショゴスが強制送還される。何処から呼び出しているのか知らんし帰る場所が何処かも知らん。
「ご苦労。これでお前も一人前だ」
さっきコンビニで買った凄い硬いアイスが入ったビニール袋を掲げる。プラモが欲しくてくじ引いて手に入れたクリアファイルとかアクリルキーホルダーとかも入っている。
「じゃあ一人前分のお賃金が欲しいなあ」
ちっ。アイスじゃあ誤魔化せんか。コイツの口座に万札突っ込まないとダメか。まあ俺は依頼人と話すだけだし、実際に身体動かしてないし。
「えー。嫌だが。そういうのは中学入ってからにしろ。してくれ」
「中学になっても母さんと暮らせないなら、本格的に姐さんのところに就職してもいいかな?」
コイツさあ。陰陽師崩れとか闇魔術師よりはずっと強いけど、まだ小学生なんだよなあ。家族で一緒に暮らしたいみたいな感情あるんだよなあ。可愛い奴だ。
「お前は警察になれ」
治安は一向に良くなる気配はなく、
「姐さん、アイスが当たって冷たい。痛い痛い!!」
「すまんな」
人と関わり過ぎて、俺もだいぶ弱くなってしまった。俺はただもう一度スサノオと殴り合いたいだけなんだが。俺の名前は
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