第17話 魔法使い④ / 超龍決戦③
◇◇◇
光の針が空を埋め尽くした。
私は、そのどこか幻想的な光景に目を奪われていた。
それは彼───聖騎士ヤマダの放った超級魔法だった。
私の間違いでなければ、確かに彼は『《
まさにそれは私の《
どうして彼がそれを───と考えた瞬間、鋭い頭痛に襲われた。痛みは極短い間ではあったものの非常に強烈で、集中力を途切れさせぬようにすることに苦労した。何とか歯を食いしばって、聖騎士ヤマダから指示された魔法を中断することなく詠唱を続けた。
ここで、これまでに幾度となく生じてきた違和感が、再び生じた。
───聖騎士ヤマダからの指示?
そもそもどうして私は何も疑問に思わず、聖騎士ヤマダに従っているのか。
考えても考えても、わからないことだらけで、頭がどうにかなりそうだった。
頭痛だってそうだ。気が付けば急に、頭を突き刺すような痛みが私を襲うようになった。
確か初めて頭痛が起きたのは……勇者様の元を離れ、聖騎士アシュリーと対峙したあとだったか───
聖騎士ヤマダのオーダー通りに《
そのときの私の胸中は筆舌に尽くしがたいものだった。
絶体絶命の危機的状況のはずなのに、どうしてか……顔がニヤけるのを堪えられなかった。
私にはもう自分がわからない。
ただ私にできたことは、この表情を悟られぬように、帽子で顔を隠すことだけだった。
○○○
《
「任せなさい」
彼女はすぐさま
「《
彼女は双剣を鮮やかに繰ると、ゲロビの残滓を斬り裂き、綺麗さっぱりと消し去った。
ちょうどそこで、
俺の《
背後から声が聞こえた。
「イチローくんっ!! やったかッ!!(プルさん)」「ふーん、やるじゃん!(オルフェ)」「やったぜ!!」「これで終わったわ!」「俺、戻ったら彼女に結婚を申し込むんだ」
あっ(白目)。
あかんでぇ! こらあかんでぇ!!
バリバリに速攻で建築されたフラグの具合に俺には、先の展開が読めてしまった。
それから二分経たない内に異変が起こった。
俺の予想は大当たりだった。
地を濡らした染みは、時を遡らせるように消え失せ、蒸気のような物が急激に上空へと昇った。
◇◇◇
───アンジェリカ頼めるか?
彼に聞かれた。
私の意志や思考とは裏腹に、なぜか二つ返事で頷いてしまった。
ぐちゃぐちゃな胸の内を曝け出してしまわないように、言葉少なく了承することで精一杯だった。
彼に従って詠唱に取り掛かるも、胸の内にくすぶり続ける違和感が、一体いつ頃生じたものなのか、私は考えずにはいられなかった。
眼前では、聖騎士ヤマダが《
三つ首龍の高さは、平均的なギルドの建物を四つ積み重ねたほどのものであった。これほどの巨体の化け物は誰も見たこともなく、出会ってしまったなら誰しもが絶望するだろう代物であった。そのはずだった。
なのに───
そうだ。
そうだった。
いつだって彼は、己を顧みず私の前に立ち、己が傷付くことを厭わず───とそこで、いつもの鋭い頭痛が彼女の手を引き、思考は中断された。
もうやめなよ、と誰かが言った気がした。
けれど、けれどやめるわけにはいかなかった。
あの日から一度たりとも振り返ることのなかった記憶を、私は今一度、振り返ってみようと思う。
○○○
上空に昇った気体が凝集し、十分な体積の液体となると、俺達の前にどばぁと降り注いだ。
迷宮内での《水晶のヒトガタ》に放った《
いくら大きくても、そしていくら対処されたとしても、一撃で仕留められないのは俺の実力不足だ。セナやセンセイの《
けど、
「プルさん、俺にはこうなることがわかってました」
安心させるために、俺は彼女達に言ってみせた。
「手探りの段階ですが、あの化け物を倒す手段が徐々に見えてきました」
「イチローくん、引き続き君に従う。指示を頼む」
プルさんの発言に、オルフェも頷いた。
「なら───」
俺の考えを伝えて、お願いしたのだった。
そして、ちょうどそのとき、《
「《ナルカミィィィィッッッ!!》」
彼女の声に従い、急激な勢いで積乱雲が生じた。ゴロゴロ、ゴロゴロと、人間の本能を怯えさせるに足る音が大気を震わせ響き渡り、巨大な
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